抄録
社寺林の構造特性を明らかにすることを目的として, 個々の社寺境内の空地面積, 所有形態, 周辺の土地利用, および, 1945年の戦災を社寺境内属性とし, これらの諸属性と社寺林構造の関係を検討した。対象とした社寺林の量的な構造を示す変量について因子分析を行い, 樹林の量的規模因子, 疎開度因子, 面積および個体に関する平均量因子を抽出することができた。抽出された因子をもとに社寺境内をサンプルとして因子得点を求め, 社寺境内の諸属性との関係を検討した。その結果, 量的規模因子と疎開度因子に関しては境内の空地面積の影響が大きく, 面積および個体に関する平均量因子に関しては神社と寺院という所有形態の相違の影響が大きいことが明らかとなった。対象とした社寺林において出現頻度の大きな樹種をカテゴリーとし個々の社寺境内をサンプルとして, 樹種と社寺境内を同時に分類することによって出現樹種と社寺境内の諸属性の関係を検討した。その結果, 神社において高木性樹種が出現し寺院において小高木性あるいは低木性樹種が出現する傾向が特に顕著であることが明らかとなった。