日本緑化工学会誌
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地震荒廃地における森林群落の成立過程に関する研究 (II)
遷移初期における木本群落の発達特性
小野 裕楊 喜田北澤 秋司
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1998 年 24 巻 3-4 号 p. 192-200

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抄録

長野県御岳山において, 地震荒廃地における森林の成立過程を明らかにするため, 地震発生後12年目の荒廃地における木本植物の発達状態を検討した。その結果, 地震発生後12年を経過した現在, 木本群落の発達段階を三つに分けることができた。(1) 階層構造未発達段階: 木本植物の侵入・消失の繰り返しが激しく, 樹高生長が遅かった.この段階がみられる地点は, 岩塊におおわれているところがほとんどであり, これは地表が乾燥しやすいことに基因していると考えられる。(2) 階層構造をもつ段階: 堆積地点および地表が浅く削りとられた地点では, 先駆樹種の樹高生長が速く, 階層構造が形成された。上層はやせ地や乾燥地に耐え育つ先駆樹種のヤマハンノキおよびミヤマヤシャブシに占められ, 下層は, ヤナギ類が優勢樹種であったが, 耐陰性樹種の侵入も多くみられる。(3) 先駆樹種の侵入が抑制される段階: 樹冠閉鎖度が60%近くになり, 先駆樹種の下層への侵入が抑制され, 先駆樹種以外の樹種 (カツラ, ミツデカエデ, ヒノキなど) の侵入が多くなり, 徐々に優勢となった。

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