日本緑化工学会誌
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切土のり面における侵入木根系調査と防災効果に関する一考察
吉田 幸信内田 純二舌間 貴宏増田 拓朗橋本 和明
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2001 年 27 巻 4 号 p. 610-616

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抄録

切土のり面表層の安定については, 樹木の根系による関与が考えられる。しかし, 実際の切土のり面にて, 樹木の根系発達状態や根系の緊縛力について調査した事例は少ない。そこで本報告では, 種子から生育している樹木を対象に, トレンチ調査と引抜調査を実施して根系の伸長状況を把握した。調査対象木は, 切土のり面に自然侵入してきたアカメガシワ・エノキ・ヤマハゼと, 建設時に播種によって導入したヤマハギ・イタチハギとした。トレンチ調査結果から, 樹高が4-5mのアカメガシワ・エノキ・ヤマハゼの根系は5m×6mで分布しており, 樹高が2mのイタチハギの根系は1m×2mで分布していた。次に, 防災的な観点から, 切土のり面に群生しているイタチハギの緊縛力を把握するため, 現地にて引抜試験を実施した。その結果, 引抜破断時の根系断面積と引抜強度との問に強い相関関係が確認できた (r2=0.72)。また, 樹齢7年のイタチハギの平均引抜強度は, 1本あたり約1.6tfであった。この結果から, イタチハギの根系によるのり面保護効果について試算したところ, 深さ50cm程度の崩壊であれば, 根系の緊縛力によって抑止できると推測した。

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