日本官能評価学会誌
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研究報文
パンの性状に及ぼす未加熱紅麹添加の影響
高橋 真美森髙 初恵
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2010 年 14 巻 2-2 号 p. 100-107

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I. 緒言

紅麹菌の生産する紅麹色素は, 食品の着色料, 着香料, 保存剤として幅広く利用されており, 抗菌作用(Wong et al., 1977, Wong et al., 1981, Martinkova et al., 1999), 発癌予防効果(安川等, 1991), 抗炎症作用(Yasukawa et al., 1994, 1996)などの生理活性作用を有することが知られている. 穀類に紅麹菌を生育させた紅麹には, コレステロール生合成阻害活性を有するモナコリンK(Endo et al, 1979, 1980, 1985a, 1985b)や血圧降下作用を有するγ-アミノ酪酸(辻等, 1992a, 1992b, 1992c, 1992d, 1992e, 1993, 久代等, 1996)などの生理活性物質が含まれていることが報告されている. 近年, モナコリンKには骨形成たんぱく質であるBMP(bone morphogenic protein)やFGF(fibrolast growth factor)などの成長因子を促進する効果(Mundy et al., 1999)があることも報告されている.

筆者らは, 先行研究にて紅麹菌の色素生産性について, 培地成分のデンプンを替えて検討を加えた. その結果, うるち米デンプンを添加した培地ではもち米デンプンを添加した培地よりも色素生産性は向上し, さらに, うるち米デンプンをβ-アミラーゼで処理した培地においては, 未処理のうるち米デンプンを添加した培地よりも色素生産性が向上したことを報告した(高橋等, 2004). さらに, うるち米デンプンを炭素源とし, 5種類の窒素源を用いて紅麹菌の色素生産性について検討した結果, ペプトンを添加した培地において, 4種の他の窒素源を用いた培地よりも色素生産性は向上し, また, ペプトンを単独で添加した培地よりもペプトンとアスパラギン酸を混合添加した培地において色素生産性が高まることを報告した(高橋等, 2009a).

筆者らは, 紅麹を実際の食品に活用するために, パンに紅麹色素(高橋と森髙, 2007)および加熱紅麹(高橋と森髙, 2009b)を添加して, その力学特性と嗜好性を検討した. 紅麹色素添加パンでは, 微量(小麦粉に対して, 0.005%および0.01%添加)の紅麹色素添加で「色」, 「香り」, 「総合評価」において嗜好性が高まった(高橋, と森髙, 2007). また, パンの硬さは減少し, 凝集性は高まり, パンの食品価値が高まることが示された. 一方, 加熱紅麹添加パンでは, 紅麹色素添加パンにおいて嗜好性が向上した評価項目に加え, 「味」においても嗜好性が増すことが示された(高橋と森髙, 2009b). しかし, 加熱紅麹の添加濃度が増すと硬さは増加し, 凝集性は減少し, テクスチャーは低下した.

本研究では, 先行研究の結果を踏まえて, 未加熱紅麹がパンの組織, 物性, 嗜好特性に与える影響について検討し, パンの性状に改善効果が認められたので報告する.

II. 実験材料および方法

1. 試料

未加熱紅麹(以後, NHMとする)はグンゼ社製を用い, 乾燥前の加熱処理を行わず, 粒度を100meshに粉末化して用いた. NHMのα-アミラーゼ活性は, デンプンを基質とし, 40℃, pH5.0において30分間に1%デンプン溶液1mlをヨウ素呈色度が波長670nm, 光路長10mmで66%の透過率を与えるまで分解する活性を1単位として測定した結果, 検出されなかった. プロテアーゼ活性は, 乳カゼインを基質とし, 38℃, pH6.0において, 反応初期の1分間に1μgのL-チロシンに相当する非タンパク性のフェノール試薬呈色物質の増加をもたらす活性を1単位として測定した結果, 75単位/gであった.

パンの材料配合割合(高橋と森髙, 2009b)は, 強力粉(日清製粉社製, カメリヤ)280.0g, 上白糖(日新製糖社製)20.0g, 無塩バター(雪印乳業社製, 雪印北海道バター)20.0g, スキムミルク(森永乳業社製)6.0g, 食塩((財)塩事業センタ―製)4.0g, ドライイースト(日清製粉社製, スーパーカメリヤ)2.6g, 水(サントリーフーズ社製, 南アルプス天然水)190.0gとした. NHMは強力粉280.0gに対して重量で0%, 0.5%, 1.0%, 2.0%, 5.0%を置換して添加し, 5種類のパンを試料に供した. 製パン方法は, 自動ホームベーカリー(エムケー精工社製, HBS403)を用いて行った. 材料を自動ホームベーカリーに入れ, 混捏12分後に, 予備発酵を32℃で45分間行い, さらに13分間混捏した. その後1次発酵を35℃で60分間行い, ガス抜き後, 2次発酵を35℃で30分間行い, 再びガス抜きを行った後, 最終発酵(ホイロ)を35℃で50分間行い, 190℃で40分間焼成した. 焼成後, パンは室温(26℃)にて2時間放冷し, 試料に供した.

2. 生地

(1)物性

AACC(1990)に準じて1の試料の項で述べたパンの材料を混捏し, 120.0gの生地を混捏後(A:0分), 予備発酵後(B:45分), 1次発酵後(C:105分), 2次発酵後(D:135分), 最終発酵後(E:185分)にエクステンソグラフ(Brabender社製)を用いて30℃にて測定した.

(2)体積

体積はエクステンソグラフで用いた生地と同じ5段階の各発酵工程の生地を30℃で3次元計測器(アステックス社製, SELNAC-VM)で測定した.

3. 焼成パン

(1)組織観察

焼成したパンの中心部を凍結乾燥機(JFD-300, 日本電子社製)を用いて凍結乾燥させ, 試料の表面を金で蒸着し, 走査型電子顕微鏡(JSM-5310LV, 日本電子社製)にて, 加圧電圧5kv, 35倍で観察した.

(2)比容積

パンの比容積は, 焼成放冷後のパンを焼成した形のまま菜種置換法(大羽と川端, 2003)で体積を測定し, 体積を重量で除して算出した.

(3)テクスチャー

テクスチャー測定用試料としてパンの中心部から20l×20w×19hmm3を切り出し使用した. テクスチャー特性値はクリープメーター(RE-33005, 山電社製)を用いて測定した. テクスチャー測定は直径30mmの円筒型のプランジャーにより, 圧縮率50%, 試料間の差を明確にするために1mm/sの定速圧縮により行った. 測定は1種類のパンの中心部から10片を切り出し, 同一種類のパンを6回焼成し, 合計60個を測定した.

(4)官能評価

焼成後, 室温(26℃)にて2時間放冷後14時間ビニール袋で保存したパンの中心部より40l×40w×10hmm3に試料を切り出した. パネルは昭和女子大学20~21歳の女子大学生45名とした. 上記1の試料の項で述べた5種類のパンを用いて, 調査項目を色, きめ, 味, 香り, 食感, 総合評価の6項目とし, 順位法によって嗜好の評価を行った.

4. 統計処理

一元配置分散分析を行い, 有意差の検定はTukey法の多重比較により解析した. 統計解析はSPSS17.0Jを用い, いずれの場合も危険率5%未満をもって有意と判定した. データは, 平均値±標準偏差で求めた. その結果は, 半円周上の0度の方向が第1位, 180度の方向が第5位に対応する各順位の方向に, その順位とした人の比率を長さとする線分を加え, 評価の一致度をアイテムベクトルの長さで, 平均順位をアイテムベクトルの方向で表した馬場の方法(1986)による順位グラフで表した. 官能評価の有意差の検定は, 図中の有意水準5%の棄却楕円により行った.

III. 実験結果及び考察

1. 生地

(1)物性

NHMの添加による影響を明確にするために最大添加量である5.0% NHM添加生地(以後, 5.0% NHM生地とする)をエクステンソグラフで測定した結果をFigure 1に示した. 生地のエネルギー(a)は, 混捏後(A:0 分)では無添加生地が96.3cm2で最も高い値を示し, NHM生地83.0cm2 と比べ有意に高かった. しかし, その後はNHM添加生地(以後, NHM生地とする)はいずれの発酵時間においても無添加生地と比べ有意に低かった. 生地の抗張力(b)においては, 混捏後(A:0分)の無添加生地が797B. U. で最も高い値を示したが, NHM生地790B. U. と比べ有意差は認められなかった. しかし, その後はNHM生地はいずれの発酵時間においても無添加生地と比べ有意に低かった. 生地の伸長度(c)は, 混捏後(A:0分)では無添加生地が98mmで最も高い値を示したが, 予備発酵後(B:45分)および最終発酵後(E:185分)ではNHM生地がそれぞれ140mmおよび83mmで無添加生地と比べ有意に高かった. 1 次発酵後(C:105分)と2次発酵後(D:135分)では無添加生地との間に有意差は認められなかった.

松本(1992)やDempster et al.(1952)は力の弱い生地は醗酵時間と共に急速に抗張力が低くなり, 伸長度はよくなるが, だれた生地になりやすく, 力の強すぎる生地は抗張力は高いが伸びが悪く, いわゆる熟成し難い生地になると報告している. さらに, Dempster et al.(1952)や松本(1992)は生地の網目構造は小麦粉に含まれる酵素作用が加わると緩和現象が起こると報告している. これらのことから, 本実験において予備発酵後(B:45分)で NHM生地の抗張度(b)が無添加生地よりも低下し, 伸長度(c)が無添加生地よりも高まったのは, プロテアーゼの作用により生地のグルテン構造が影響を受け, 生地の脆弱化が生じたためと考えられる.

(2)体積

5.0%NHM生地の体積変化について測定した結果をFigure 2に示した. 2次発酵後(D:135分)では無添加生地が123cm3で最も高い値を示したが, NHM生地121cm3と比べ有意差は認められなかった. しかし, 他のいずれの発酵時間でも NHM生地は無添加生地と比べ有意に低かった. 田中と松本(1991)はグルテンのネットワーク構造はSS結合によるものと疎水結合, 水素結合, イオン結合などの非共有結合によるものとで相互作用しており, 酵素活性, 酸化還元作用, 生地のpH, 温度等により構造に変化が生じると報告している. さらに, 田中と松本(1991)は生地の体積はCO2の気泡の分布と大きさに依存し, 途中でガスが抜けると体積は低下すると報告している. また, 松本(1992)は生地の形成において, 酵素や酸化剤などが過剰に作用すると徐々にガスの包蔵性を失い, ブレークダウンすると報告している. 加熱紅麹(以後, HMとする, 高橋と森髙, 2009b)では紅麹由来成分がイーストの増殖を促進し, 生地の膨張力に影響を及ぼすのではないかと報告した. NHMにはHMと同様に紅麹由来成分が存在している. しかし, プロテアーゼの作用あるいはNHM粒子がグルテンのネットワーク構造に影響を及ぼしたために, NHM生地では体積が低下したものと考えられる.

2. 焼成パン

(1)組織構造

Figure 3は焼成したNHM添加パン(以後, NHMパンとする)を35倍に拡大した断面写真である. NHM無添加(a)ではグルテンの網状構造は焼成により引き伸ばされ, 気泡間の壁面は厚く, 構造はしっかりと形成されていた. 1.0% NHMパン(b)では, 気泡が大きくなり, 気泡間の壁面が薄く観察された. 2.0% NHMパン(c)では気泡間の組織が粗くなり, 5.0% NHMパン(d)では気泡と気泡を接合する壁の厚さが著しく薄くなり, 大きな空洞を有することが認められた.

パンを製造する際, かびのα-アミラーゼとプロテアーゼを共存させた場合, 膨化度が高まり, パンの内相が改良され, 製パン性が向上したことが報告されている(Miller et al., 1948, Beck et al., 1957). さらに, プロテアーゼはグルテンの形成に関与し, 生地の伸展性を高めると報告されている(Pomeranz et al., 1966, 佐藤等, 1962, 藤山, 2006, 松本, 1992). 本研究で用いた NHMでは, α-アミラーゼの活性は認められなかったが, プロテアーゼ活性は75単位/gであった. また, 紅麹色素添加パン(以後, MPパンとする, 高橋と森髙, 2007)と比較した場合, NHMパンでは組織の崩壊が MPパンより著しかった. これは, MP(高橋と森髙, 2007)ではプロテアーゼ活性は27単位/gであり活性が低かったためで, 両者のプロテアーゼ活性の相違がNHMパンとMPパンの組織崩壊の差の一因であると考えられる.

(2)比容積

パンの比容積をFigure 4に示した. 2.0% NHMパンの比容積は4.64mL/gと最も高い値を示し, 添加濃度0~2.0%までは濃度に依存して比容積は有意に大きくなった. しかし, 5.0% NHMパンでは4.40mL/gと2.0% NHMパンよりも有意に小さくなった.

組織観察(Figure 3)の結果より, 5.0% NHMパンでは気泡が大きくなり, 気泡間の壁面の崩壊も著しく, 肉眼観察ではパンの中心部分の構造が粗く, 上面や側面では割裂が生じていた. これは, 5.0% NHMパンではプロテアーゼにより生地の伸展性が増しすぎて, パンの骨格構造を維持することが困難となり体積が減少し, その結果比容積が減少したものと推察される.

HM添加パン(以後, HMパンとする)では(高橋と森髙, 2009b), HM粒子の添加濃度が増すほどグルテンの形成に影響を及ぼし, 伸展性が減少した. しかし, 同じ粒子状のNHMを含む NHMパンではプロテアーゼの作用によりグルテンの伸展性が高まり膨化度が増したために, NHM粒子の混在による影響が相殺され, 比容積が高まったものと考えられる. 一方, MPの最大添加濃度1.0%までの範囲内ではMPパン(高橋と森髙, 2007)と0.5% NHMパンとの比容積に差は認められなかった. これは, MPのプロテアーゼ活性は NHMよりも低かったが, NHM粒子の粒径がMP粒子よりも大きかったために, NHM粒子の存在によりNHMパンの膨化が抑制され, 両者の比容積において変化が生じなかったものと考えられる.

(3)テクスチャー

NHMパンの硬さをFigure 5に示した. 無添加パンが硬さ3.20×103Paと最も高い値を示し, NHMの添加濃度が高くなるほど低くなる傾向が認められた. 凝集性をFigure 6に示した. 5.0% NHMパンの凝集性は0.80と最も高い値を示し, 添加濃度0.5%と1.0%間を除き, NHMの添加濃度が高くなるほど凝集性は有意に大きくなった. 井上(2003)は気泡膜の厚さは生地の伸展性や柔軟性に影響すると報告している. 凝集性において, 5.0% NHMパンが大きかったのは, 圧縮に対してグルテン膜の厚いパン(Figure 3)は塑性的変形を生じるが, NHMの添加濃度が高くなるとプロテアーゼの作用によりグルテン膜が薄くなり弾性的変形を生じ, 復元性の高いパンとなったと考えられる.

高野等(1986)は米粉添加パンの製造において, 小麦粉と共に米粉を添加すると小麦粉の吸水率は低下し, グルテンの伸展性やパンの硬さに影響を及ぼすと報告している. また, 森(1999)はパン製造において各種酵素の添加により, 無添加の場合と比較し, パンの比容積は増加し, 硬さは減少し, パンの品質が改良されると報告している. 我々の先行研究においては, HM(高橋と森髙, 2009b)の添加により硬さは増加し, 凝集性は減少し, テクスチャーの嗜好性は低下した. しかし, 本研究ではNHMの添加により硬さは減少し, 凝集性は増加した. このことからNHMをパンに添加することによりパンの品質は改善されると考えられた.

(4)官能特性

官能評価の結果は, Figure 7に示した. プロットの先端が円周に近いほど評価の一致度が高く, 0度の方向ほど平均順位が高いことを示している. 「色」(a), 「香り」(d)の好ましさでは, 0.5%および1.0% NHMパンが有意に高く評価された. 「味」(c), 「食感」(e), 「総合評価」(f)の好ましさでは, 0.5%, 1.0%および2.0% NHMパンが有意に高く評価された. 「きめ」(b)の好ましさでは, 0.5%および1.0% NHMパンが有意に高く評価された.

以上の結果から, 0.5%および1.0% NHMパンでは官能評価6項目(色, きめ, 味, 香り, 食感, 総合評価)すべてにおいて高く評価され, 「味」, 「食感」, 「総合評価」では2.0% NHMパンにおいてもパンの嗜好性は増すと評価された. MPパン(高橋と森髙, 2007)では, 0.005%および0.01% MP添加で「色」, 「香り」, 「総合評価」の嗜好性が高まり, 一方, HMパン(高橋と森髙, 2009b)では, 0.5%および1.0%HMパンの6項目と2.0% HMパンの「味」において高く評価された.

本研究で用いたNHMパンでは, 前報のMPパン(高橋と森髙, 2007)およびHMパン(高橋と森髙, 2009b)で, 有意に高いと評価された項目(色, 香り, きめ, 味, 食感, 総合評価)に加え, 2.0% NHMパンの「食感」, 「総合評価」において嗜好性が高く評価された. 井上(2002)は, パンは膨化食品であり膨化の状態がその美味しさ, 特に食感に多大な影響を及ぼすと報告しており, さらに井上(2003)はパンの食感は気泡膜の厚さに多大な影響を受けると報告している. 本研究において, 2.0% NHMパンは膨化度が最も高く, NHM無添加パンの気泡膜よりも薄かったことが, 食感の嗜好性が高く評価された原因と考えられる. なお, 5.0% NHMパンでは気泡膜が極端に薄すぎることで膨化度が低下したことから, パンの気泡膜の薄さには, 限界があると考えられる.

これらの結果から, 2.0% NHMが添加濃度として適正と考えられた. また, NHMをパンに添加することでHMパンより品質がさらに向上したことから, NHM添加により総合的にパンの食品としての価値が高まることが示唆された.

Figure 1

Effect of non heating Monascus koji on various readings of the extensogram of dough

(a) Energy, (b) Resistance to extension, (c) Extensibility

-○-:dough without Monascus koji

-●-:dough containing 5.0 % non heating Monascus koji (ratio of 5.0 % non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour)

A:after mixing (0 minutes)

B:after preliminary fermentation (45 minutes)

C:after first fermentation (105 minutes)

D:after second fermentation (135 minutes)

E:after final fermentation (185 minutes)

a-h) Values with different letters are significantly different (p<0.05).

Figure 2

The volume of dough

-○-:dough without Monascus koji

-●-:dough containing 5.0 % non heating Monascus koji (ratio of 5.0 % non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour)

A:after mixing (0 minutes)

B:after preliminary fermentation (45 minutes)

C:after first fermentation (105 minutes)

D:after second fermentation (135 minutes)

E:after final fermentation (185 minutes)

a-f) Values with different letters are significantly different (p<0.05).

Figure 3

SEM photographs of breadcrumbs containing non heating Monascus koji

Magnification: × 35, Bar length: 500μm

(a) breadcrumbs without non heating Monascus koji (control)

(b) breadcrumbs containing 1.0 % non heating Monascus koji

(c) breadcrumbs containing 2.0 % non heating Monascus koji

(d) breadcrumbs containing 5.0 % non heating Monascus koji

; ratio of 0~5.0% non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour

Figure 4

Specific loaf volume of breads containing non heating Monascus koji

; ratio of 0~5.0 % non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour

a-d) Values with different letters are significantly different (p<0.05).

Figure 5

Hardness of breadcrumbs containing non heating Monascus koji

: ratio of 0~5.0 % non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour

a-c) Values with different letters are significantly different (p<0.05).

Figure 6

Cohesiveness of breadcrumbs containing non heating Monascus koji

: ratio of 0~5.0% non heating Monascus koji for 280.0g of strong wheat flour

a-d) Values with different letters are significantly different (p<0.05).

Figure 7

Sensory evaluation of breadcrumbs containing non heating Monascus koji

(a) color, (b) smoothness, (c) taste, (d) flavor, (e) texture, (f) overall evaluation

-○-:breadcrumbs without non heating Monascus koji

-▲-:breadcrumbs containing 0.5% non heating Monascus koji

-△-:breadcrumbs containing 1.0% non heating Monascus koji

-■-:breadcrumbs containing 2.0% non heating Monascus koji

-□-:breadcrumbs containing 5.0% non heating Monascus koji

IV. 要約

NHM(未加熱紅麹)がパンの物性, 嗜好性に及ぼす影響について検討し, 以下の結果を得た.

NHM添加生地の体積は, 2次発酵(135分)以外の発酵工程では無添加生地に比べ有意に低かったが, 比容積は無添加パンに比べ NHMのどの添加濃度においても有意に増加した. 機器測定においては, 硬さはNHMの添加濃度が増すほど無添加パンと比べ有意に低下し, 凝集性は増加し, 柔らかい, 弾力性の高いパンとなった. 官能評価では0.5%および1.0% NHMパンの色, きめ, 味, 香り, 食感, 総合評価の嗜好性の評価が, さらに, 2.0% NHMパンでは味, 食感, 総合評価の嗜好性が無添加パンと比べ有意に高く評価された.

これらの結果から, NHMパンにおいては2.0%添加濃度がパンの食品的価値を最も高め, MPパン(紅麹色素を添加したパン, 高橋と森髙, 2007)や HMパン(加熱紅麹を添加したパン, 高橋と森髙, 2009b)よりも多量の紅麹を添加できることが判明した.

 

本研究を遂行するにあたり, 試料のNHMをご提供いただいたグンゼ株式会社に深謝申し上げます. また, 生地物性の測定に関してご指導いただいた東京都立食品技術センターに深謝申し上げます.

引用文献
 
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