PIP 関節掌側脱臼の8 例を報告する.罹患指は小指4 指,環指3 指,中指1 指であり,2 例に中央索付着部の裂離骨折を認め,1 例に経皮的鋼線固定,1 例にスクリュー固定を行った.骨折のない6 例には,全例に損傷した中央索の修復,3 例に片側側副靱帯断裂の修復を行った.軟部組織の介在により整復困難な症例が2 例存在した.後療法はPIP 関節の鋼線もしくは外固定2 週の後,可動域訓練を開始した.最終観察時に疼痛や運動時礫音を訴えた症例はなく,亜脱臼残存症例もなかった.PIP 関節の可動域は屈曲平均103°,伸展平均-1.3°と比較的良好であったが,経皮的鋼線固定を行い鋼線抜去後の可動域訓練が滞った1 例でPIP,DIP 関節の伸展制限が残存した.PIP 関節掌側脱臼は保存療法では亜脱臼を制動できないことが多いが,損傷した伸展機構,靱帯の修復を行うことで安定性が得られ,比較的良好な成績が得られた.しかし,受傷時回旋変形を生じている症例では,介在物による整復困難例があることに注意すべきである.