日本手外科学会雑誌
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自由投稿論文
変形性関節症を伴う小指PIP 関節陳旧性側副靱帯損傷に対する靱帯再建術の術後成績
齋藤 憲射場 浩介銭谷 俊毅高島 健一花香 恵
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2025 年 42 巻 2 号 p. 50-55

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抄録

不安定性と運動時痛を認める手指陳旧性関節靭帯損傷において,関節症(osteoarthrosis:OA)合併例は関節固定や関節形成術の適応となる.一方,OA 合併例でも可動域制限が軽度で活動性の高い症例は手術適応に検討を要する.今回,OA を伴う小指PIP 関節陳旧性側副靭帯損傷症例に対して靭帯再建術のみを行った4 例4 指の術後成績を検討した.対象は全例男性,橈側側副靱帯損傷で,関節不安定性と尺屈偏位を認め,疼痛Visual Analogue Scale は平均44,OA のKL 分類はgrade 1が1 指,2 が2 指,3 が1 指であった.手術時平均49 歳,受傷より手術まで平均9.9 年であった.靱帯再建術のみを行い,PIP 関節30 度屈曲位で4 週間の鋼線による一時的関節固定後,リハビリテーションを行った.術後は全例で疼痛と不安定感の改善を認めた.KL 分類grade 2 から3,3 から4 への進行を各1 例に認めたものの症状はなかった.日常生活障害は改善し,全例が仕事やスポーツに復帰した.OA 合併例でも,靱帯再建と一時的関節固定で関節安定性を獲得することで,臨床症状の改善が獲得できる可能性がある.

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