スポーツ社会学研究
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原著論文
ジェンダーを“プレイ”する
―スポーツ・身体・セクシュアリティ―
岡田 桂
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2010 年 18 巻 2 号 p. 5-22

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抄録

 本稿では、スポーツがジェンダー/セクシュアリティ研究の対象として浮上してきた1970年代から現代までの約40年間について、研究と理論の変遷を概観し、後半部分では、その理論と対応する現実のスポーツ界での出来事を解説する。この際、スポーツをジェンダーおよびセクシュアリティ研究で扱う大きな意義として、以下の二点を前提とした。
 1.スポーツという文化が、その当初より男性による実践を前提として発達してきた強固な男性ジェンダー領域(ホモソーシャルな領域)であること。
 2.スポーツが、身体そのものを用いたパフォーマンスによって、その能力の優劣を可視的に提示するという、現代に残された数少ない身体を中心とした文化であること。
 これらの特徴は、特に1990年代以降、クィア理論によって従来のジェンダー理解が覆されていくことで重要度を増している。即ち、スポーツがホモソーシャルな領域であると仮定すれば、従来「男性ジェンダー」領域とされてきたスポーツは、その“男らしさ”の定義の中に既に(ヘテロ)セクシュアリティの要素も含み込んでいることになる。また、 セックス(身体)とジェンダーの連続性が恣意的であり、ジェンダーがその絶え間ない身体的パフォーマンスの結果だとすれば、スポーツもまたその身体パフォーマンスのイメージによって仮構される男性ジェンダーの理想像を形作ってきたことになり、そのジェンダーの理想と身体を結びつけてきた神話も失効することになる。
 これらの理論を踏まえた上で、現実のスポーツ界におけるジェンダー/セクシュアリティを巡る状況が、そのアイデンティティの普遍化/マイノリティ化(本質化)の間を揺れ動いていることを紹介し、理論や研究の流れと一致していることを示して結びとする。

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© 2010 日本スポーツ社会学会
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