スポーツ社会学研究
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原著論文
日本スポーツ界における暴力指導への「自己反省」
―体育・スポーツ史研究と教員養成の観点から―
鈴木 明哲
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2014 年 22 巻 1 号 p. 21-33

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抄録

 本稿の目的は、日本スポーツ界における暴力的指導に関して、体育・スポーツ史研究及び教員養成の観点からいくつかの問題提起をすることである。
 本稿による提言は以下のようにまとめられる。
 1)注意すべき最も重要な点は、スポーツにおける暴力的指導に対して我々が「自己反省」の意識をもつ必要があり、これらの問題に関する全ての発端が体育やスポーツの内部に由来しているという認識をもつ必要があるということ。
 2)日本のスポーツ界における暴力的指導が軍隊のシステムに由来しているという説明がなされている。が、しかし、この説明は歴史的史料に基づいておらず、実際にいつ、どのようにして学校の体育やスポーツに入ってきたのか、その過程についてはほとんどわかっていない。それゆえ我々は、史料に基づいた歴史的事実の提示をしなければならない。
 3)スポーツにおける暴力的指導に関する歴史的研究が進展してこなかった理由は、問題史研究という手法に注目してこなかったからであり、我々はこの研究手法に注目する必要がある。
 4)体育やスポーツのあらゆる分野で暴力のない新しい、創造的な指導法を構築するために、我々は体育やスポーツについて全く知らない多くの人々と意見を交換しなければならない。
 5)教員養成系大学における学生たちの受講態度に留意することは、カリキュラム改革よりも重要である。
 最後に重要な点として、本稿では以下の点を強調しておきたい。日本のスポーツ界から暴力的指導を排除することはおそらく困難であろうと思われるが、我々は、そのためには、相当に長い時間を要することを覚悟しなければならないということである。

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© 2014 日本スポーツ社会学会
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