スポーツ社会学研究
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原著論文
2020東京オリンピック競技会
―レガシー戦略の虚像と実像―
佐伯 年詩雄
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2015 年 23 巻 2 号 p. 25-44

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抄録

 2020年7月、再び東京でオリンピックが開かれる。周知のように、現代五輪は様々な欲望を刺激し、それをパワーゲームに組織する巨大な装置である。そして、「復興五輪」のキャッチフレーズに典型化されるように、このグローバルイベントには「理想と現実」、「ブランドと偽物」、「本音と建て前」が交錯している。本稿は、この東京五輪大会の「招致過程」、「招致計画」をケースにして、この状況を「虚と実」の視点で整理し、オリンピックが直面している根本問題を明らかにする。
 始めに、東京五輪招致の動機と背景を取り上げ、それが石原元都知事による都の臨海副都心開発計画破綻の累積債務清算という「負のレガシー」処理であることを示す。
 次に招致活動を取り上げ、五輪招致「オールジャパン」の捏造を、「広島・長崎共催五輪構想」の消滅との対比、「震災復興」の政治的利用の分析によって明らかにする。
 次いで東京五輪レガシー戦略を取り上げ、新国立競技場建設問題、開催計画書におけるレガシー約束を分析し、五輪競技と市民スポーツの現実との乖離等から、レガシー戦略の失敗を指摘する。 特に、「オリンピック・レガシー戦略」は、近年提唱され、世界的にも好意的に受け取止められているものであるが、その虚実を明らかにすることによって、それは、行き詰まっている五輪大会の存在意義を再構築し、五輪イデオロギーを再建しようとするIOCのあらたなパワー戦略であることを示す。
 最後に、この視点からIOCの新政策「アジェンダ2020」を取り上げ、それがIOCと現代五輪の権力保持を意図するヘゲモニー戦略であることを明らかにする。

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© 2015 日本スポーツ社会学会
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