スポーツ社会学研究
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原著論文
法人格概念によるスポーツ組織研究の枠組み
―クラブ、連盟、行政、企業、NPO、NGO、スポーツに固有な法人組織―
張 寿山
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2015 年 23 巻 2 号 p. 61-78

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抄録

 近代スポーツの成立以来、スポーツ活動が持つ社会的影響力や経済力は増大し続けている。この様な近代スポーツの隆盛は、社会制度としてのスポーツ組織の発展に支えられている。しかしながら、「スポーツ組織」についての研究の多くは企業組織との比較でスポーツ組織の問題を指摘し、スポーツ組織を企業組織に近づけていくような方向での問題解決をはかろうとするものが多い。一方で、スポーツの本質やスポーツ行為者に視点を置いて、スポーツに特有の組織あるいはスポーツによる社会貢献をより強化・発揮させるための組織制度は何か、という視点での研究は限られていた。 この一つの原因は、スポーツ組織研究において共通の基盤となるべき、スポーツ組織を実証的に分析するための概念的枠組みが、未だ成立していないことにあると指摘されている。
 自称他称のスポーツ組織として、競技連盟、国や地域によって様々な形態を有するスポーツクラブ、スポーツ関連企業、学校の運動部やサークル、プロフェッショナルスポーツの興業機構、スポーツ大会組織、公営私営のフィットネスジム、スポーツ愛好者の集まり、スポーツメディア、スポーツ研究機関、スポーツ仲裁所等が挙げられるが、これらのどの組織を対象とするかで、組織論・経営論・社会制度論の何れにおいても全く観点の異なる研究になることは容易に想像できる。
 本稿は、法理論として確立した分類枠である「法人格」を基準に、スポーツ組織を4象限マトリクス分析の手法を採用して分類した。4象限の分類軸として目的合理性軸と価値合理性軸を設定し、これにより、多種多様なスポーツ組織が既存の法人格である行政、企業、NPOとして扱える組織と、「スポーツ活動に固有な組織」に分類されることを明らかにした。官僚型組織や企業型組織とは異なる視点によるスポーツ組織研究の重要性を提示した。

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© 2015 日本スポーツ社会学会
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