スポーツ社会学研究
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原著論文
グローバリゼーションとスポーツにおける意味の変容
清水 諭
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2016 年 24 巻 2 号 p. 41-51

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抄録

 2000年代に入り、国際オリンピック委員会(IOC)と国連などの国際機関が連携して、スポーツによる開発と平和(Sport for Development and peace: SDP)が展開してきた。2016年リオ・オリンピックの開会式においても環境保全や人権保護への貢献活動が強くアピールされた。本論文では、J.J.MacAloonの文化的パフォーマンスの理論から、オリンピックという文化的パフォーマンスの体系を示したあとで、R.Robertsonのグローバリゼーションの理論を下敷きにして、SDPが生起する背景を考察した。そして、SDPの歴史的経緯を追い、その可能性を探究した。筆者は、SDPの潮流について、以下のことを指摘している。 1)スポーツのすべての側面がプラスと評価されるのではないこと 2)新自由主義的側面と関係していること 3)西欧の「人権文化(human rights culture)」を普遍主義的に捉えないこと。そして各事例においてナイーブかつ対話をベースにした実践的アプローチが求められること 4)SDPがこれまでの開発支援の限界性を払拭し、またスポーツの領域にとどまらず、病気、飢餓、紛争と難民の創出などの問題にアプローチできているかを批判的に評価すること 5)グラスルーツに伝統的に存在してきたパワーバランスを混乱させないよう注意を払うこと。

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© 2016 日本スポーツ社会学会
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