スポーツ社会学研究
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社会的支援と社会的ネットワークとが高齢者の身体活動実施に与える影響に関する研究
中山 健川西 正志守能 信次
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2002 年 10 巻 p. 72-85,137

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抄録

身体活動への参加が高齢者に身体的、社会的、心理的な利益をもたらすことが先行研究において報告されてきた。しかし、高齢者の多くが身体的に不活発である。近年、身体活動実施者を増加するために、身体活動実施に対する社会的支援と社会的ネットワークが注目を集めている。そこで本研究では社会的支援と社会的ネットワークとが高齢者の身体活動へ与える影響を明らかにすることを目的とした。
本研究のデータは神奈川県藤沢市の3施設に通う60歳以上の来館者304名から得た。検証的因子分析とパス解析の結果、以下のことが明らかとなった。
1) 高齢者の身体活動実施に対する社会的支援は、従来の社会的支援に関する研究で扱われてきた人的支援のみではなく、情報支援、施設・プログラム支援、アクセス支援の4因子で構成された。
2) 社会的ネットワークの規模および社会的ネットワーク内での接触頻度は男性に比べ女性の方が大きく活発であった。
3) 身体活動において活発な女性高齢者の身体活動実施に有意な影響を与えた社会的支援は情報に関する支援であった。
4) 男女ともに社会的ネットワーク内での接触頻度が身体活動実施に影響を与えていた。
5) 男性では健康意識が、また女性では年齢、健康意識そして情報支援が社会的ネットワーク内での接触頻度に有意な影響を与え、性差がみられた。
今後の研究において、高齢者の身体活動実施レベルに応じた効果的な介入を行なうために社会的支援や社会的ネットワーク機能を測定する尺度開発の必要性が示唆された。

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