抄録
芸術と技術とは、近代科学による「技術」が成立するまでは、ほとんど同義のものであり、おおくの民族の言葉でも同じ語を使って呼ばれる。ところが近代科学による「技術」は、過去にみられた技・芸とは完全に異質の存在である。後者が以心伝心という神秘的修練によって習得されるものであるのにたいして、前者は言語化し、論理化し、そうすることによって万人に普遍化しようとすることを特徴としている。この二つの相違は本質的な相違であり、むしろ対立ともいうべきものである。一方で他方を解釈したり、置きかえたりすることはできないものであることを、しっかり明確にしておくことが必要である。