スポーツ社会学研究
Online ISSN : 2185-8691
Print ISSN : 0919-2751
ISSN-L : 0919-2751
オリンピックをなぜ開催するか
ロイ ジョン・W平野 秀秋
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 14 巻 p. 9-14,117

詳細
抄録

この論文でわたしは、オリンピック大会を開催しつづけることに価値があるかどうかに、あえて疑問を呈する。具体的にわたしが疑問視するのは、オリンピックの道徳的妥当性、スポーツにとっての妥当性、および実用的 (経済的) 妥当性、という三点である。このうちの道徳的妥当性に関しては、オリンピック大会に付きまとう「プロリンピズム」、グローバリゼーション、「全体主義化」、および腐敗という観点から疑問視する。次に、スポーツにとっての妥当性に関しても、ほとんどのスポーツに別の世界選手権大会が開催されていること、多くの種目に世界中の最高の競技者が参加しないこと、そして多種多様な種目が寄せ集められていること、などによってその妥当性が損なわれている。さらに、大会の総費用、特に誘致合戦の費用、保安対策費、ドーピング・テスト費用、インフラストラクチャの建設費用などを考えると、実用的 (経済的) な妥当性も疑問とせざるを得ない。結論として、わたしは「オリンピック大会は、それに費やされる経済的・人間的コストにふさわしいといえるか」ということに疑問を投じる。

著者関連情報
© 日本スポーツ社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top