スポーツ社会学研究
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生理学とスポーツについて
平野 秀秋
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2008 年 16 巻 p. 37-49

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抄録

本稿は3つの章からなる。第I章は生理学的見地にかぎってホバマンの作品を検討した。その結果、結論としてこの作品はすくなくとも原文の表題にいちじるしい難点を持ち、ダーウィン進化論への誤解を生じさせる恐れがあると結論した。第II章は特に最近のDNA研究の成果を紹介しつつ、これを中軸とする応用研究にはいくたの怖ろしい陥穽があることを論じた。「ヒトの改造」が空想でなくなるからである。第III章はユーウェン夫妻の最新作の紹介を兼ねて18世紀末からの生理学は多くの無視できない疑似科学の傍流をもつことを論証した。当面は優生学の成立の内情を記述して結論に代えたが、この傍流は現在も継続しており、「ヒト改造」の危険は大量生産・大量消費のためのPRを装った世論操作や意識改造もその中に加えて、むしろより歯止めが利かなくなる可能性があると結論した。

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