スポーツ社会学研究
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スポーツ消費者行動研究の社会学的視座
安 昌圭藤原 健固
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1996 年 4 巻 p. 63-78

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抄録

今日, スポーツ産業の発展に伴い, スポーツは生活領域の一文化として位置づけられている。特に, スポーツはその特徴から選択財としての要素が強くなり, スポーツ参与は様々な場面で多様に展開されている。更に, このような現象は消費者行動の新しい変化となって現れているが, スポーツ消費者行動の本質的問題に関する解明はあまりなされていない。
本研究では, 消費者行動は様々な生活場面で多様に展開されているという点に着目し, スポーツへの参与の側面において, 生活行動における財の使用行動としてスポーツ消費者行動を特徴づけ, 複雑な様相を示しているスポーツ消費者の社会化過程に対する基本構造を明らかにすることを目的としている。特に, 第3次生活空間で行われる余暇行動としての「スポーツへの参与」を「消費者行動」と捉え, 財を媒介とする社会行動として「生活行動」に注目することによって,「スポーツへの社会化」に対する視座を想定することの有効性について論じ, その際, 主要な論点は次のとおりである。
1) 従来の伝統的な機能主義的観点から消費者行動を捉えることの困難さは, 生活領域の全体的視点からスポーツ消費者行動研究に着目しなければならないという新たな発展方向を提示している。
2) 行動場面を離れては考えられないスポーツ参与行動は, 具象的なシンボルとして財の選択的要素が強い。
3) スポーツ消費者行動における社会体系論の採用は, 1つの学際的研究として消費者の社会化過程の解明にその意義がある。
4) 行動様式・生活様式に対する注目は, スポーツ的社会化研究に関する様々な概念, 分析方法, 変数要因を包括的なモデルの構成に必要な新たな理論的根拠を提供するものと見ることができる。

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© 日本スポーツ社会学会
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