スポーツ社会学研究
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現代社会における賭けに関する研究
競馬を事例として
麻生 征宏
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キーワード: 賭け, 消費社会, ターミナル
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2001 年 9 巻 p. 50-59,133

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抄録

スポーツと賭けの関係は密接であるにもかかわらず、これまで賭けの研究はあまりなされてこなかった。遊びを出発点とする社会学の中で賭けは論じられてきたが、遊びの中から生まれてくる勝ち負けや誇示が、どのように社会に拡大するのかについては検討されてこなかった。この点については差異や顕示的消費を主題とする消費社会論が、研究の糸口を提示するのではないかと考えられた。
そこで本研究では、現代社会を消費社会ととらえ、まさにその消費社会的な発展を遂げた競馬を事例として、そこにかかわる《賭けのマイクロシステム》としてのファンを通して現代社会における賭けについて検討した。
予想という独特の行為を通して紡がれていったファンの語りは、競馬メディアによって、中身のない「語り」にされてきたことが明らかになった。しかし、最近になって、この「語り」を「語り」と承知の上で競馬を楽しもうとする新たなファンが登場してきた。そして、同時進行的に変化を遂げていく競馬メディアがさらに絡み合うことによって、ファンはスクリーンを通して提供される情報を、自分なりに解釈して編成しなおすという段階に来ていることが新たなファンの検討から推察された。予想とは、または競馬を見るとは、各々が「ターミナル (情報端末)」となって、情報を受信し、情報を解読し自分なりの映像を作り上げているということである。言い換えると、予想という行為において「わたしの場合」ということを常に考えながら、自分とは何かという問いかけを繰り返していくということである。それによって主体としての認識と客体の具体化を同時に行い、消費社会で展開される差異の獲得をよりはっきりとしたかたちで目指していっていることが推察された。

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