抄録
本研究の目的は,いじめや差別が起こりにくい環境を意図的に創出できるかを検討することであった。いじめや差別が起こる主原因としては,閉鎖的な学校環境が,安全かつ安心に対話をする場所ではない可能性があること,学校内の各場面における対話に,平等性が欠如しているのではないかという2つの問題意識の下,5回のアセンブリ(生徒のみで実施する対話集会)を実施した。具体的には、高校生を対象に,私的集団(同クラス遊び仲間集団),公的集団(学年)を区別した。それぞれの集団において,共通認識を持つ話題が提供される環境,否定的発言が含まれる状況で話し合いを実施し,話しやすさの程度の評定とその際に感じたことを自由に記述してもらった。その結果,両集団とも,対話テーマを持った生徒のみの集会環境において,道徳的判断に基づく話しやすい環境の自然構築,攻撃性の抑制,相手の意見を受け入れる傾向が見られた。最後に,本研究における課題を考察した。