日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
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ISSN-L : 0915-7441
原 著
組織因子誘発ラットDICモデルに対するメシル酸ナファモスタットの効果
―凝血学的マーカー・血管作動性物質に対する影響―
高橋 葉子朝倉 英策表 美香荒幡 昌久門平 靖子前川 実生御舘 靖雄林 朋恵山崎 雅英森下 英理子吉田 知孝宮本 謙一中尾 眞二
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2004 年 15 巻 6 号 p. 535-540

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抄録
我々はこれまでの検討で,TF誘発DICモデルにおいては,一酸化窒素 (NO) の代謝産物である血中NOXが著増するが血中エンドセリン (ET) は微増にとどまることを明らかにしてきた.本研究では,同モデルに対してメシル酸ナファモスタット (FUT) を投与することによるDIC病態および血管作動性物質の動態への影響を検討した.Wistar系雄性ラットを用いて,TF 3.75単位/kgを尾静脈より4時間かけ点滴静注しTF誘発DICモデルを作成した.薬物投与群については,FUT 0.1mg/kg/4.5hおよび1.0mg/kg/4.5hをTF投与開始30分前から投与し,TF投与終了まで4.5時間持続点滴をした.その結果,いずれの濃度のFUTを用いた場合も,同DICモデルにおける血小板数・フィブリノゲンの低下やTATの上昇を有意に抑制し,Dダイマーの上昇を完全に抑制した.また,血尿の出現は著明に抑制された.同モデルにおける著しい血中NOX上昇は,両濃度のFUT投与によりほぼ完全に抑制された.以上,TF誘発DICモデルにおける著明な出血症状および線溶活性化 (Dダイマーの上昇) に対しFUTは著効し,本モデルに類似した臨床病態に対して,FUTは極めて有効な薬剤でないかと考えられた.また,今回の結果から,FUTのNO産生に対する強い抑制効果が明らかになり,その機序についてさらに検討すべきと考えられた.
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© 2004 日本血栓止血学会
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