日本血栓止血学会誌
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特集:「血栓止血の臨床─研修医のためにII」
3.静脈血栓塞栓症の予防・治療ガイドラインについて
小林 隆夫
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2008 年 19 巻 1 号 p. 12-17

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抄録
Point
1)高リスク患者は,65歳以上,手術後,肥満,静脈血栓症合併/既往,長期臥床,悪性腫瘍,外傷・骨折後などで,科別では,整形外科,一般外科,産婦人科,脳外科,泌尿器科に多い.
2)高リスク患者では,入院時または手術前に静脈血栓塞栓症の評価を行う.
3)予防の基本は,早期歩行および積極的な運動である.中リスク患者では弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法が推奨され,高リスク患者では間欠的空気圧迫法または低用量未分画ヘパリンが推奨される.ただし,整形外科下肢手術では,選択的Xa阻害薬であるフォンダパリヌクスが保険適用された.
4)術前に深部静脈血栓症が発症している場合,間欠的空気圧迫法は肺血栓塞栓症を誘発しかねないので禁忌である.
5)いかなる予防を行っても周術期肺血栓塞栓症はゼロにはならないが,早期診断・治療をすることにより救命は可能である.
6)初回歩行時には必ず下肢や呼吸状態を観察し,付き添うことが肝要である.
7)薬物治療としては,未分画ヘパリンやワルファリンによる抗凝固療法およびウロキナーゼや組織プラスミノーゲンアクチベータによる血栓溶解療法が主体となる.
8)肺血栓塞栓症の場合,重症度に応じてカテーテル的治療や外科的血栓摘除術も行われる.
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© 2008 日本血栓止血学会
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