抄録
日本人軽症血友病A患者2名の第VIII因子遺伝子解析から病因遺伝子異常としてArg531His変異を同定した.患者は共に軽症のフェノタイプであった.両者の第VIII因子は,比活性は同等であるものの,活性および抗原のレベルはかなり異なっていた.患者1の血漿の第VIII因子活性を14種類のAPTT試薬を用いて凝固1段法で測定した結果,25.2%から48.1%の範囲で測定され,用いるAPTT試薬によって大きく異なっていた.この測定値の乖離は,APTT試薬のpHとの間に負の相関関係が認められた.患者2の血漿をサンプルとした検討から,検体の希釈にイミダゾール緩衝液を用いることで乖離を最小化できる可能性が示唆された.これらのことからArg531His変異の第VIII因子レベルは,患者によって異なっており,またさらに測定法によっても大きく影響を受けることが明らかとなった.Arg531Hisのような軽症例を的確に検出・把握できる標準的な検査法を確立する必要がある.