2012 年 23 巻 5 号 p. 443-449
ヒトゲノムの全塩基配列が解読され,ポストゲノム時代と称される現在では,その情報を医療に活用することが期待されている.最も実現に近いと予想されるのが,ヒトゲノム情報に基づく個別化薬物療法である.疾患名で治療薬や治療法を選択する従来の方法から,同じ病名であっても,個人のゲノム情報を参考にして異なる治療薬や治療法の選択をする方法に変化しつつある.これらのパラダイムシフトを推進する学問体系が,ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics,PGx:ゲノム薬理学)であり,ファーマコゲノミクス検査(以下,PGx検査)は,個々の患者に最適な治療薬,用法・用量の選択を可能にするため,患者個人の遺伝的特徴を診断する検査であるといえる.抗血栓療法の領域においてもファーマコゲノミクスの活用が検討されている.本稿では,抗血栓療法におけるファーマコゲノミクスの現状について解説したい.