血友病Aは血液凝固第VIII因子の遺伝子変異を病因とし第VIII因子の量的・質的異常,血友病Bは血液凝固第IV因子の遺伝子異常によっておこる第IX因子の欠乏・異常により引き起こされる,出血性疾患である.血友病の遺伝子解析は,病因遺伝子変異を直接同定する確定診断であり,高い臨床的有用性と意義を持つ.血友病の補充療法の止血効果を激減させるインヒビターの発生は,遺伝的要因と環境要因が複雑に関与し,特に遺伝的には免疫関連遺伝子などの1塩基多型が関与することが徐々に判明してきた.
血友病の病因遺伝子変異とインヒビター発生に関与する1塩基多型の解析とそのデータの集積は,分子病態解明はもとより,新しい治療法の戦略や開発に,非常に重要な情報となる.さらに,今後の血友病医療において,遺伝子変異とインヒビター発生に関与する1塩基多型の解明が,個々の患者におけるテーラーメイド医療の発展を推進すると考えられる.