抄録
第IX因子インヒビターには,先天性第IX因子欠乏症(血友病B)患者に発生する同種抗体としての,いわゆる血友病Bインヒビターと,自己抗体として非血友病者に発生するインヒビター(後天性血友病B)に分けられる.前者は第IX因子製剤の補充療法中の血友病B患者の1.5〜3%に発生するが,これは血友病Aの20〜30%の発生率にくらべて極めて低い.その発生と時期を同じくして第IX因子タンパクに対するアレルギー,アナフィラキシー反応がみられることも血友病Bインヒビターの特徴である.第IX因子インヒビター発生の基礎ならびに臨床研究は第VIII因子インヒビターに比べて,その症例数の少なさゆえに遅れている印象がある.ここでは第IX因子インヒビターの臨床とインヒビター発生におけるさまざまな危険因子と治療(止血療法,免疫寛容療法など)に関わる最近の知見を交えながら解説する.