2015 年 26 巻 5 号 p. 534-540
要約:近年のゲノム編集技術はDNA に二本鎖DNA 切断(double-strand break; DSB)を引き起こす手法と,生体が保持するDSB の修復機構に基づいている.標的と成る遺伝子座にDSB を引き起こす手法にはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN),TAL エンドヌクレアーゼ(TALEN),CRISPR/Cas9 がある.DSB が生じると,修復過程である非相同組換えによってフレームシフトを生じ,標的遺伝子の発現が異常となる.一方,DSB の両側DNA に相同性をもつ遺伝子配列が存在した場合,一定の確立で相同組換えによる遺伝子修復が生じる.DSB の手法は,とくに第3 世代にあたるCRISPR/Cas9 に著しい進歩が認められており,Cas9 のオルソログ,改変型Cas9,また相同組換えの効率を上昇する手法が次々と報告されている.血栓止血領域においても,本技術を応用した次世代遺伝子治療の開発が期待される.