日本血栓止血学会誌
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原著
第VIII 因子と第IX 因子に対する2 種の発色性合成基質法を応用した新たな検査手順により確定診断した高力価自己抗体を持つ後天性第XI 因子欠乏症
髙嶋 眞理稲葉 浩天野 景裕篠澤 圭子福武 勝幸
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2019 年 30 巻 3 号 p. 534-543

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抄録

要約:40 歳代になり突然筋肉内出血などの自然出血を繰り返し,明らかなAPTT 延長を認めたが診断に難渋した女性患者について,発色性合成基質法による凝固因子定量法を用いて第XI 因子に対する特異抗体を確認する検査室診断の新しい手順を開発した.患者の内因系凝固因子の定量値はすべて著しい低下を示し,各種解析から患者血漿中には高力価の抗第XI 因子抗体が存在することが示唆された.精製患者IgG を用いた解析は,IgG と第XI 因子との非特異的な親和性のため困難であった.しかし発色性合成基質法による第VIII 因子と第IX 因子の測定法を組み合わせる手順を発案し,患者のIgG 抗体は第XI 因子に対する特異抗体であり,後天性第XI 因子欠乏症であると確定診断することができた.本症はいまだ限られた報告しかないが,抗体力価が高いと凝固因子活性の検査値の異常が偽低値として生じることがあり,診断には多角的な解析が重要である.

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© 2019 日本血栓止血学会
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