抄録
本稿は, ニュージーランドの財務報告の特徴を明らかにすることを意図したものである.英連邦諸国における会社会計制度規制の伝統として, 会計基準がニュージーランドでも法制化されないできた.しかし, 1955年会社法は, 1993年会社法と1993年財務報告法に区分されるに至った.この1993年財務報告法によって, 財務報告基準の設定に関してニュージーランド会計士協会(NZSA)からの独立性が高められ, 法的効力が付与された.1993年財務報告法と財務報告基準がプライベート・セクターのみならずパブリック・セクターにおいても適用されるように設定されている点に特徴がある.これにより, ニュージーランドの新しい財務報告の幕開けとなった.会計基準の設定には, 国際会計基準とオーストラリア会計基準との調和化も図られている.しかし, アニュアル・レポートを分析すると, 財務報告の作成基準については, 1993年財務報告法に従って作成されているものの, 国際会計基準への準拠に関する記載がなく, 米国において資金調達を行っている会社については, US GAAPへの準拠ならびにUS GAAPとの差異やそれによる影響額を注記している.財務諸表については, 財務業績計算書と財政状態計算書に開示の多様性が認められた.