2019 年 30 巻 6 号 p. 845-849
要約:脳梗塞急性期における神経細胞保護薬を用いた多くの臨床試験は失敗し,組織プラスミノゲン・アクチベーター(t-PA)とエダラボンを除き臨床応用がなされなかった.またt-PA 静注療法の適応は脳出血合併症のリスクのため,発症4.5 時間以内と制限されている.われわれはt-PA 静注療法に伴う脳出血合併症の抑制のため,t-PA 静注療法に併用する血管保護薬の開発を目指している.まず血管内皮増殖因子に着目し,動物モデルにて,その阻害がt-PA 静注療法に伴う脳出血を抑制することを示した.また,動物モデルにて成長因子プログラニュリンが,脳梗塞に対して血管保護作用のみならず,神経細胞保護,抗炎症作用を有することを示した.以上のようなt-PA 静注療法に血管保護作用を有する薬剤を併用するアプローチは急性期脳梗塞の新しい治療につながる可能性がある.