2019 年 30 巻 6 号 p. 837-844
要約:動脈硬化の内因的な危険因子は遺伝的背景,高齢,性別(男性)であり,修飾可能な危険因子は喫煙,肥満,脂質異常症,高血圧,糖尿病などで,これらの組み合わせにより動脈硬化性疾患の発症リスクが増大する.そのため動脈硬化性疾患の予防には,生活習慣の改善,生活習慣病に対する薬物療法,血栓形成を抑制する抗血栓療法と多面的なアプローチが重要である.これまでの臨床,病理,基礎研究により動脈硬化症は炎症性病態であると理解されており,脂質低下薬,抗炎症薬の心血管イベント抑制効果がそれを裏づけている.一方,すべてのイベントを回避することはできず,またすべての抗炎症薬が有効性を示したわけではない.アテローム血栓症の誘因となるプラーク破綻には,プラーク破裂とプラークびらん,結節性石灰化の破綻がある.プラーク破裂につながるプラークの不安定化は,脂質低下薬,抗炎症薬の効果が期待できるが,プラークびらんや結節性石灰化の破綻機序は明確ではなく,今後の病態解明が待たれる.