2020 年 31 巻 1 号 p. 45-54
非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome: aHUS)は,主に補体第2経路の異常活性化によって発症する血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)である.補体関連遺伝子の変異,補体制御因子に対する自己抗体が発症に関わっているが,既知の遺伝子異常が認められないケースも少なからず存在する.全身性の予後不良性疾患として知られるが,抗C5モノクローナル抗体(エクリズマブ)の登場により予後改善が期待される.昨今,徐々にaHUSを取り巻く知見が蓄積してきているものの,未だその定義や分類,早期診断につながる適切なバイオマーカー,遺伝子背景の意義や治療方法の選択,および治療の中止基準など明確でない点も多い.今後さらなる疫学的な調査や詳細な遺伝背景の解析により,上記問題点の解明が期待される.