近年の血友病診療の進歩は著しい.凝固因子製剤の普及以前は,成書でも血友病患者は成人まで存命するのは稀とあったのが,今や年間出血ゼロの患者も多くみられ,平均余命も健常者と変わらなくなりつつある.一方で,保因者の状況は身体的にも精神的にも放置されたままであった.しかし,近年になってそういった危機感は世界的にもようやく高まりつつある.本邦では,血友病関連の多くの成書で保因者ケアに関する項目は欠かせなくなった.従来は,遺伝学的用語である「保因者」に対する解説はあったものの,ケアにまで踏み込んだものは少なかった.また,保因者問題の啓発のための機会や資材も増えつつある.医療者の関心の高まりにより,保因者も血友病包括的医療の対象であるという意識が芽生えつつある.保因者ケアが包括医療の一環として取り組まれることは,保因者の健康関連QOLの向上のみならず,新たに生まれてくる血友病患者の命をも救う.