日本血栓止血学会誌
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トピックス 新型コロナウイルス関連シリーズ
COVID-19の肺病理―びまん性肺胞傷害と血栓症―
中島 典子鈴木 忠樹
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2021 年 32 巻 6 号 p. 708-714

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抄録

COVID-19の死亡者の多くは,ウイルス性肺炎に急性呼吸速迫症候群を併発し,呼吸不全で亡くなっている.ウイルスの肺胞上皮細胞への感染に加え,血管内皮細胞への作用と血栓形成が重症化の一因となると考えられている.COVID-19関連死亡例の主たる肺病理像は,びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage: DAD)であり,進行度の異なるDAD病変が混在している.免疫機能が正常の場合,SARS-CoV-2ゲノムは,肺組織から発症4週間頃まで検出され,ウイルス抗原は,肺組織の肺胞上皮細胞,単球/マクロファージに発症2週間頃まで検出されたが,血管内皮細胞には検出されなかった.肺内フィブリン血栓は動脈系の血管と毛細血管に多くみられ,国内の院外死亡例で33%,院内死亡例で10%に観察され,発症早期から形成されていた.COVID-19組織標本の分子病理学的解析によりSARS-CoV-2の血管内皮細胞への作用と血栓形成機序が明らかになり,重症化の予防ならびに治療の開発につながることが期待される.

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