2022 年 33 巻 5 号 p. 586-592
凝固線溶分子マーカー,サイトカインおよび接着分子が,慢性期大動脈瘤(aortic aneurysm: AA)の予後を予測することができるか検討した.急性症状を伴わない慢性期AA 27例と,年齢のマッチした対照102例から採血し,CRP,IL-6,TNF-α,sIL-2R,sICAM-1,PAI-1抗原,D-dimer,PIC,TAT,VWF:Agの血中濃度を測定した.TNF-αとsICAM-1を除きAAが対象群よりも有意に高値を示した.CRPは対照例で測定されていなかったために比較できなかった.患者を,各マーカーの中央値よりも高い血中濃度を有する「高値群」と,中央値以下の「低値群」に分類した.Kaplan-Meier法でCRP,sIL-2R,PAI-1,D-dimer,TAT,VWF:Agの「高値群」は「低値群」と比較し,有意に低い累積生存率を示した.上記6マーカーが慢性期AAの病態生理と臨床経過を反映すると考えられた.