2022 年 33 巻 6 号 p. 661-666
震災に関わる静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)の発生は,Virchowの3徴と共に考察することでその発生の原因,震災特有の病態を理解することができる.深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の発生率は10~30%と報告され,震災発生後1~2週間後に発生することから,この期間に生じる震災後の避難所環境に伴う血流鬱滞や血液凝固能の亢進に対する対策が,DVT発生の予防に寄与する.本総説では,2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震において避難所環境に関わる段ボールベッドとトイレ環境の重要性に着目し,かつVirchowの3徴に沿いながら震災とDVT発生及び予防について論じる.本邦で生じた複数の震災から得られた知見は,VTE発生予防という点で含蓄に富み,将来発生しえる震災に向けて有効な施策に繋がるはずである.