日本血栓止血学会誌
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特集:ITPとTTPの新しい治療
新規トロンボポエチン受容体作動薬:アバトロンボパグ
柏木 浩和
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2024 年 35 巻 4 号 p. 468-472

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Abstract

免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病,immune thrombocytopenia, idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)におけるトロンボポエチン(thrombopoietin: TPO)受容体作動薬の有効性および安全性は,先行するエルトロンボパグ(eltrombopag: EPAG)およびロミプロスチム(romiplostim: ROMI)により示されてきた.しかしEPAGは食事や薬剤の影響を受けやすく内服時間や併用薬の制約が大きいこと,またROMIは皮下注製剤であり,かつ自己注射は認められておらず,週1回の来院が必要であることが大きな制約となっていた.新しいTPO受容体作動薬であるアバトロンボパグはEPAGと異なり,食事や薬剤の強い影響を受けない内服薬である.その有効性はEPAGやROMIと同等であり,またこれら2剤の無効例においても有効性が報告されている.血栓塞栓症の頻度がやや高い可能性があることに対し注意が必要であるが,有効性の高さと使いやすさから早期の承認が待たれる薬剤である.

1.はじめに

グルココルチコイド(glucocorticoid: GC)不応性の免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病,immune thrombocytopenia, idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)に対する治療は,2010年エルトロンボパグ(eltrombopag: EPAG),2011年ロミプロスチム(romiplostim: ROMI)の2種類のトロンボポエチン(thrombopoietin: TPO)受容体作動薬が使用可能となり大きく進展した.しかしEPAGは食事やカルシウム,マグネシウムなどの2価イオンの影響を強くうけるため,内服時間の強い制約と併用薬の注意が必要である.またROMIは週1回の皮下注製剤であり,かつ自己注射が認められていないため,毎週の来院が必要であることが実地診療における大きな問題点であった.アバトロンボパグ(avatrombopag: AVA)はEPAGと同様の内服薬である一方で,食事や多くの薬剤の影響を受けないことから,早期の承認が期待される新しいTPO受容体作動薬である.

2.AVAの構造・作用機序

AVAは旧山之内製薬により開発された非ペプチド小分子化合物である(図11.TPO受容体の細胞外領域(TPO結合部位)に結合するROMIと異なり,EPAGと同様に膜貫通領域に結合し,JAK/STAT,RAS/RAF,MAPK系などを活性化し,造血幹細胞の維持・増殖および巨核球系への分化・成熟を促し,血小板を増加させる(図22.AVAは内服薬であるが,EPAGと異なり,鉄,カルシウム,マグネシウムなどの二価イオンのキレート効果はなく食事制限の必要はない3.AVAの半減期は約19時間でEPAG(26~35時間)と大差なく1日1回の使用で安定した血中濃度が得られ,一部は肝臓で代謝されたのち,主に糞便に排泄される(表14.やはりEPAGと同様にマウスなどには効果がなく,ヒトとチンパンジーのみに血小板増加作用が認められている1

図1

アバトロンボパグおよびエルトロンボパグの構造.(KEGG DRUG Databaseより)

図2

TPO受容体作動薬の結合部位と細胞内シグナル

表1

ロミプロスチム,エルトロンボパグ,アバトロンボパグの比較21

ロミプロスチム エルトロンボパグ アバトロンボパグ
構造 Fc-ペプチド融合蛋白 非ペプチド小化合物 非ペプチド小化合物
TPO受容体結合部位 細胞外領域 膜貫通領域 膜貫通領域
投与法 皮下注射 経口 経口
食事の影響 なし あり なし
ITPにおける投与量 1~10 μg/kg 週1回 12.5~50 mg(日本人)
1日1回
20~40 mg 1日1回
効果発現時期 onset:4~9日
peak:12~16日
onset:1~2週間以内 onset:3~5日
peak:10~13日
半減期 median 3.5日(range 1~34日) ~26~35時間 ~19時間
代謝 not available
排泄経路 一部はTPO受容体との結合に依存 便(~59%;~20% 未変化体として)
尿(31% 代謝物として)
便(88%;34% 未変化体として)
尿(6%)
薬物相互座用 Fc受容体結合薬物の効果を減弱する可能性あり 多価陽イオンのキレート作用があり,本剤内服前4時間および2後時間これらを含む薬剤の使用は避ける.
OATP1BあるいはBCRPを阻害する薬剤使用時には注意する.
強いCYP2C9およびCYP3A4阻害薬使用例では血中濃度が増加する可能性がある.強いCYP2C9およびCYP3A4誘導剤薬用例では血中濃度が低下する可能性がある.

AVA,ROMI,EPAGのそれぞれの第1相試験の結果の比較から,健常人への単回投与によるベースラインからの血小板増加数はROMI 2 μg/kg皮下注で30万/μL程度であるのに対し,AVA 50 mg経口投与で10万/μL程度であった4.また連続投与によるベースラインからの血小板増加数をみると,EPAG 75 mg経口投与では10万/μL程度であるのに対し,AVA 20 mg経口投与では35万/μL程度であった46.以上の結果から,血小板増加作用においてAVAはROMIに劣るかもしれないが,EPAGより強い可能性が高い.実際,3種類のTPO授与体作動薬を使用したITP患者での血小板増加反応が,ROMI.>AVA>EPAGの順に強かったとするケースレポートがある7

ROMIはTPOと同様にADPなどの弱いアゴニストにおける血小板凝集惹起閾値を下げることが報告されたが8,最近の検討ではROMIを使用したITP患者において血小板凝集の亢進は認めておらず,むしろADPに対する反応性は低下していた9.EPAGに関しても健常人およびITP患者において血小板活性化の亢進は認めていない6, 10, 11.AVAにおいても少なくとも肝疾患患者において血小板活性化作用はないと報告されている12.一方で,TPO受容体作動薬使用患者においては,臨床治験では明らかなデータはでていないが,血栓塞栓症の増加を示す多くの報告がある.意外にも動脈血栓症よりも静脈血栓症の増加を示すものが多く,TPO受容体作動薬投与例における血漿PAI-1濃度の増加やMicrovesicle依存性のトロンビン産生能亢進などが関与している可能性がある13, 14.従って,AVAにおいても,他のTPO受容体作動薬と同様に血栓塞栓症のリスクを上げる可能性がある.

3.AVAのITP患者に対する臨床試験の結果

慢性ITP患者を対象に行われた第2相試験では,1日1回の内服投与により,20 mg投与群では投与後1週間で93%,4週で80%の患者に血小板増加反応が得られた.53人が参加した24週の投与では53%において安定的な血小板増加を認めた15.続く第3相ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)においての結果は2018年に報告された16.primary endpointである血小板増加反応(>5万/μL)が得られた週数は,実薬12.4週,偽薬0週(p<0.0001),secondary endpointであるday 8で血小板数5万/μL以上(response)となったのが,実薬群65.63%,偽薬群0%(p<0.0001),また併用薬の減量が可能であったのが,実薬群33.3%,偽薬群0%であり,AVAの有効性が示された.この有効率はROMIやEPAGの第3相試験の結果に劣る印象を与えるが,本試験の事後解析の結果からは,responseを得られた患者は,day 8:AVA 65.6% vs Placebo 0%,day 28:84.4% vs 0%,6M:87.5% vs 5.9%,であり,10万/μL以上(complete response)をえらえた患者は,day 8:AVA 37.5% vs Placebo 0%,day 28:AVA 71.9% vs Placebo 0%,6M:81.3% vs 5.9%,であった17.その後,96週にわたる延長試験においてもその有効性が維持されることが報告されている18.これらの結果は,AVAはITP患者に対して,EPAGやROMIに劣らない効果があることを示している.またAVAとEPAGの直接比較を試みたRCTは脱落例が多く早期に終了しているが,血小板増加作用はAVAの方がEPAGよりも強いことが示唆されている19

安全性に関しては,EPAGにみられるような肝障害の増加は認めておらず,実際,本邦においては “待機的な観血手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善” のためのAVAの使用が既に承認されている.一方で,臨床試験の結果からは血栓塞栓症の頻度がやや高いことが懸念される点である.47例で行われた第3相試験においては,中核試験中に,深部静脈血栓症(day 8)1例,無症候性肺梗塞(day 154)1例,脳血管障害(day 89)1例の3例,および非盲検延長試験において1例(頸静脈塞栓症)の計4例(8.5%)の血栓塞栓症が報告されている.4例中3例は血栓塞栓症のリスクを複数有していたが,血栓塞栓症の既往はなかった.また,これらの結果,AVAの年間100人あたりの血栓塞栓症の頻度は4.7であり,少数例の解析ではあるが,EPAGやROMIで報告されている頻度より高くなっている.63例が参加した第2相試験においても4例(6%)の血栓塞栓症の発症が報告されている15

以上のように臨床試験での高い有効性と安全性データが得られたことから,AVAは2019年にアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA),2020年に欧州医薬品庁(European Medicines Agency: EMA)において他剤無効の慢性ITP治療薬として承認されている.本邦においても第3相試験は終了しており,近い将来に承認されることが期待される.

4.まとめ:AVAのITP治療における今後の位置づけ

AVAは44例のROMIまたはEPAG無効・不耐ITP例に対して,41例(93%)で血小板数5万/μL以上の反応が得られたことが報告されており,従来のTPO受容体作動薬の効果不良例にはまず試みてよい治療であろう20.さらにAVAはその高い有効性と使いやすさを考えると,今後TPO受容体作動薬の中で第1選択となる可能性が高い.しかし血栓塞栓症に関しては十分に注意する必要があり,血栓症既往のある患者はその使用は避けることが望ましく,また担癌患者,抗リン脂質抗体陽性例,複数の血栓塞栓症リスクを有する患者などでは,特に慎重に使用することが望ましいと考える.

著者の利益相反(COI)の開示:

本論文発表内容に関連して開示すべき企業等との利益相反なし

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