日本血栓止血学会誌
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破局的ストレスによる急性リスクファクターの増悪と日内変動
大震災時の心血管系疾患への関与
苅尾 七臣
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1999 年 10 巻 1 号 p. 3-11

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抄録
阪神淡路大震災のような壊滅的自然災害はストレスのなかでも最も強い破局的ストレスに位置づけられる. 震災時, 最も被害の大きかった地域の冠動脈疾患および脳卒中等の心血管系疾患死亡は前年度同時期に比べ, 1.5-2倍増加し, その97%が高齢発症であった. また, 震災のストレス強度に比例して, 血圧の一過性上昇, 血液粘度増加, 凝固線溶亢進, 内皮細胞刺激亢進などの急性リスクファクターの増悪がみられた. これらの急性リスクファクターは日内変動が知られており, 早朝に増悪する. 震災後の心血管系疾患死亡の発症時刻は早朝から午前中が昨年に比し1.5倍, 夜半から明け方が2倍増加したが, 午後から夜間就寝時までは昨年と不変であった. 震災時の心血管系疾患のメカニズムとして, 動脈硬化の進行したハイリスクグループに, 強烈な精神的及び身体的ストレスがトリガーとなり急激な血圧上昇, 凝固・線溶亢進状態, 血液粘度増加, 内皮細胞機能不全による血管攣縮などの急性リスクファクターの増悪に加え, その日内変動が影響を与えた可能性がある.
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