日本輸血細胞治療学会誌
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症例
遡及調査にて判明した輸血後B型肝炎ウイルス感染の1例
田守 昭博藤野 惠三尾嶋 成子武田 和弘河田 則文日野 雅之西口 修平
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2008 年 54 巻 3 号 p. 393-397

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抄録
遡及調査の対象となった血液製剤を輸血された患者で,6カ月目にHBs抗原が陽転化した症例を経験した.受血者は急性白血病の治療中であった61歳男性.ラミブジン投与により輸血後B型急性肝炎の発症を阻止し得た.輸血前には患者のHBV関連マーカーは全て陰性であった.献血者血液と患者血清についてHBVの全塩基配列を比較した結果1塩基をのぞき一致したため輸血による感染と確定した.感染源とされる献血サンプルは高感度の個別核酸増幅検査(NAT)にてHBV DNAを検出した.本症例は,当院にて全数調査に登録した輸血患者921例の中の1症例であった.輸血後にHBV DNAの陽転化した他の8例では,輸血された血液製剤の該当する保管検体について個別NATを実施したがHBV DNAを検出しなかった.この8例中7例がHBc抗体陽性でありHBV感染晩期のためHBs抗原が陰性であったが,原疾患の進行や医療行為によりHBVの再活性化の生じた可能性が高いと考えられた.
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© 2008 日本輸血・細胞治療学会
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