日本輸血細胞治療学会誌
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症例
二方法(PCR-Luminex法とPCR-SBT法)間でのタイピング結果の不一致を契機に発見されたHLA-Bローカスの新アリル
菊地 正美小野 智菅原 亜紀子安田 広康Nollet Kenneth E.大戸 斉
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2010 年 56 巻 1 号 p. 43-47

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抄録
PCR-Luminex法とPCR-SBT法(sequence based typing)でHLA-Bの結果が不一致となった症例を経験し,そのアリルの遺伝子配列からHLA-Bの新規アリル(HLA-B*4002new)であることがわかった.
当初,患者のHLA-Bアリルの1つはPCR-Luminex法でHLA-B*4006と判定したが,PCR-SBT法を用いた骨髄バンクからの報告はHLA-B*4002関連アリルの塩基が置換したアリルであることが示唆された.そこで,患者HLA-Bの塩基配列を調べ,HLA-B*400201と比較した結果,exon 3領域にある塩基369がC→Tに置換していることが判明した.また,母親由来のHLA-B*4002newは患者の妹にも遺伝されていることが,家系調査の結果から明らかとなった.
本研究によって明らかになったHLA-B*4002関連アリルは,変異部位を含む99番目コドンがTATであったため,アミノ酸はHLA-B*400201のTACと同様にチロシンに翻訳され(同義置換),HLA-B*400201と同一のHLA-A*2601-B*4002new-DRB1*0901とハプロタイプを形成していた.また,日本人においては,HLA-B*4002関連アリルのうち,HLA-B*400201がほとんどを占めていることから,今回見出されたアリルはHLA-B*400201から点突然変異によって形成されたものと推測される.抗原分子としては,HLA-B*4002アリルによってコードされるHLA-B61抗原と血清学的に同等な特異性を示すと考えられる.
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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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