日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
論文記事
非溶血性輸血副作用を誘導した抗HLA Class II抗体陽性血漿と末梢血単核細胞との反応上清による血管内皮細胞の透過性亢進作用
若本 志乃舞藤原 満博阪川 久子高橋 大輔丹羽 光一森岡 正信佐藤 進一郎加藤 俊明東 寛池田 久實
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 56 巻 3 号 p. 391-399

詳細
抄録

【背景】非溶血性輸血副作用(nonhemolytic transfusion reactions:NHTRs)の病因において,抗HLA Class II抗体による単球の活性化と,その結果放出される炎症性メディエーターが重要な役割を果たしていると考えられる.また,NHTRsの症状である発疹,蕁麻疹,血管浮腫,肺水腫等の病態には血管透過性の亢進が関与している.
【方法】抗HLA Class II抗体の作用により単球から放出された炎症性メディエーターが血管透過性亢進作用を有するか否かについて検討した.重篤なNHTRsの原因製剤となった抗HLA Class II抗体陽性血漿(抗HLA-DR血漿)とヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMNC)とをインキュベートし,得られた反応上清をヒト血管内皮細胞に添加した.デキストラン分子の透過性の変化を測定することにより,血管透過性亢進の有無を評価した.
【結果】抗HLA-DR血漿とPBMNCsを3時間以上インキュベーションして得た反応上清は血管透過性亢進作用を示した.この作用は抗体の特異性に依存していた.反応上清に抗TNF-α中和抗体及び,抗IL-1β中和抗体の両方を添加することにより,血管透過性亢進作用は抑制された.また,TNF-α及びIL-1βにより活性化される転写因子,nuclear factor κB(NF-κB)の阻害剤を血管内皮細胞細胞に作用させることにより,血管透過性亢進は抑制された.一方,アポトーシス阻害剤の影響はみられなかった.
【考察】抗HLA Class II抗体の特異性に依存して単球が活性化され,その結果,産生・放出されたTNF-α及びIL-1βにより血管透過性亢進作用が誘導された.従って,抗HLA Class II抗体による単球の活性化と,その結果放出される炎症性メディエーターが,輸血副作用の発疹,蕁麻疹,血管浮腫及び肺水腫等の病態に関与することが示唆された.

著者関連情報
© 2010 日本輸血・細胞治療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top