日本輸血細胞治療学会誌
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症例
Rh血液型不適合輸血によっても溶血性副作用を呈さなかった抗C+e+HI抗体保有症例
菅原 亜紀子橘川 寿子高崎 美苗奥津 美穂斎藤 俊一川畑 絹代安田 広康大戸 斉佐藤 善之横山 斉
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2010 年 56 巻 4 号 p. 495-500

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抄録

抗HIの影響のため抗C+eの同定に時間を要し,対応抗原陽性の不適合同種赤血球が輸血された症例を経験した.
症例は69歳AB型男性.約1年前に輸血歴がある.手術に際する輸血申込で不規則抗体検査を実施したが抗HIを認め,同種抗体共存の有無を確認する前に輸血を要した.抗HIを吸着除去した血漿で交差適合試験を実施し,適合した赤血球濃厚液(Ir-RCC-LR)4単位(2バッグ)を輸血した.その後,低力価の抗C+eの存在が確認されたため術後出血に対してはC(-),e(-)の製剤を輸血した.初めの製剤はC(+),e(+)であった.
抗C+eはポリエチレングリコール―間接抗グロブリン試験(PEG-IAT)にて輸血当日力価2倍,輸血後30,80日目に力価4倍を示した.輸血後5,7日目に実施した直接抗グロブリン試験(DAT)は陰性であったが,患者血球から抗C+eを含む汎反応性抗体が解離された.低力価のためIgGサブクラスについては評価できなかった.輸血後4カ月以上臨床経過を観察したが溶血性副作用の所見は認められなかった.
抗C+eが低力価であったこと,更に出血によって初めに輸血されたC(+),e(+)血液が一部喪失したことから溶血性輸血副作用を呈さなかったと考えられた.

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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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