日本輸血細胞治療学会誌
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輸血前・後ウイルス感染症検査の実施率向上について
猪股 真喜子山口 千鶴山本 磨知子北澤 淳一
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2010 年 56 巻 6 号 p. 702-708

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抄録

肝炎,HIV感染症等の輸血関連感染症対策として,当院では,2006年5月に「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」に則って,輸血前・後ウイルス感染症検査(以後,輸血前・後感染症検査)の実施体制を整備した.
輸血前感染症検査は,輸血実施が確認された時点でHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HCVコア抗原,HIV抗体の6項目,輸血後感染症検査は輸血3カ月後にHBV-DNA,HCVコア抗原,HIV抗体の3項目を実施した.
2006年5月から2009年6月までに輸血を受けた患者576人中,輸血前感染症検査は518人(89.9%)が実施,「輸血前・後感染症検査を希望せず」58人(10.1%)と「死亡」86人(14.9%)を除くと輸血後感染症検査対象者は432人で,転院先での実施を合わせ415人(96.1%)が輸血後感染症検査を実施した.
当初,医師,看護師や患者・家族の輸血関連感染症への認識不足から輸血前・後感染症検査未実施が散見されたが,看護部門対象に輸血勉強会等で輸血関連感染症の重要性を啓発したところ看護師が輸血前・後感染症検査について補足説明できるようになり,検査実施率が向上した.さらに,転院先の主治医や患者宅への直接の電話連絡により,高い輸血後感染症検査実施率を得た.

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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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