日本輸血細胞治療学会誌
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不規則抗体スクリーニングにおける酵素法の意義
大橋 恒石丸 健天満 智佳佐藤 進一郎加藤 俊明池田 久實
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2010 年 56 巻 6 号 p. 709-715

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抄録

背景:酵素法は,産生初期のRh抗体を感度良く検出できる特徴があり,我が国では多くの施設が不規則抗体スクリーニングにこの方法を組み込んでいる.しかし,酵素法は非特異反応があり臨床的意義のない冷式抗体を検出しやすく,場合によっては必要な輸血を遅延させてしまう恐れがある.今回我々は酵素法で検出される抗体の性状を解析し,不規則抗体スクリーニングにおける酵素法の意義について検討を行った.
方法:酵素法陽性の特異抗体123例について,反応増強剤無添加の間接抗グロブリン法(Sal-IAT),PEG法(PEG-IAT),カラム凝集法(MTS-IAT)の3法を実施した.また,抗体の臨床的意義を評価するため,アイソタイプの鑑別とIgG抗体感作量の測定,および単球貪食能試験(MMA;monocyte monolayer assay)を実施した.
結果:3法とも陽性の71例をA群,Sal-IAT陰性でPEG-IATとMTS-IATのどちらかあるいはともに陽性の34例をB群,3法とも陰性の18例をC群に分類し,各群の抗体の性状を比較した.A群とB群はIgG1が主体であり,抗体感作量はC群よりも高く,MMAの陽性率はそれぞれ87%と24%であった.一方,C群はIgMが主体で,MMAは全例陰性であった.
結論:臨床的意義があると考えられる酵素法陽性の抗体は,PEG-IATやMTS-IATによって検出可能であった.高感度な間接抗グロブリン法で不規則抗体スクリーニングを行う場合,酵素法を実施する意義は低いと考えられた.

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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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