日本輸血細胞治療学会誌
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原著
臍帯血単核球分離における採取後経過時間と保管温度条件の影響の検討
湯沢 美紀長村(井上) 登紀子石下 郁夫尾上 和夫田村 友樹高橋 敦子幸道 秀樹山口 暁東條 有信
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2011 年 57 巻 3 号 p. 139-145

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抄録

近年,臍帯血は造血幹細胞のみならず組織幹細胞ソースとしても注目されている.臨床使用の臍帯血処理方法であるHES遠心分離法による有核細胞の分離について,海外のガイドラインにおいては採取から細胞処理までの時間は48時間以内,室温での保管および搬送がよいとされている.一方,組織幹細胞用の細胞処理として多くの論文で採用されているフィコール法による単核球の分離についての検討報告はない.本研究では,臍帯血採取後の経過時間や温度条件が,フィコール法による単核球分離に及ぼす影響について検討した.その結果,採取から細胞処理開始までの経過時間(採取後経過時間)によって有核細胞,CD34陽性細胞の回収率に有意差は認めないものの,採取後経過時間が長いほど有意に単核球回収率および細胞生存率の低下を認めた.特に,フィコール処理後の単核球層の好中球混入率は,採取後の時間経過に伴い有意に増加した.さらに,臍帯血の保管温度の検討において,採取後30時間でのフィコール処理後単核球層の好中球混入率は,比較的低温で保管した場合のほうが室温保管に比べ有意に低かった.今回の検討において,経過時間や温度等の保管条件が,臍帯血単核球処理後の細胞組成に影響を及ぼすことが分かり,採取後の臍帯血管理状態の重要性が再確認された.

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© 2011 日本輸血・細胞治療学会
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