日本輸血細胞治療学会誌
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症例
新たな変異型RHD遺伝子をもつweak D初妊婦の1例
嶋田 里子安田 広康佐藤 須磨子加藤 博橋本 志奈子小宮 ひろみ則竹 保治伊藤 正一菊地 正輝佐々木 佳奈小笠原 健一大戸 斉
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2011 年 57 巻 3 号 p. 153-159

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抄録

背景:抗Dを保有していないD陰性妊婦に対しては,児由来のD陽性赤血球による同種免疫感作を防止するため,妊娠期間中あるいは分娩時に抗Dヒト免疫グロブリン(RhIG)の投与が推奨されている.しかし,weak Dと判定された妊婦へのRhIG投与については判断が分かれるところである.
症例および結果:妊娠34週目の初妊婦で,Rh(D)血液型検査で直後判定は陰性,間接抗グロブリン試験(IAT)で陽性の結果からweak Dと判定した.妊婦にはRhIGの投与は行わず経過観察した.児(第1子)はRh(D)陽性であったが,周産期および出産後も抗D産生は認められなかった.母親のRHD遺伝子解析をしたところgDNAイントロン4のスプライシング受容部位にA>Gの変異があり,転写産物にはイントロン4に由来する87bpの塩基挿入を認めた.
結論:RhIGを投与せず経過観察したweak D初産婦を経験した.児はRh(D)陽性であったが,母親には抗D産生を認めなかった.母親のRHD遺伝子にはこれまでに報告のないIVS4-2A>Gの変異があり,weak Dはスプライシング異常によりRhDタンパクに29個のアミノ酸が挿入したことによって生じたものと考えられた.

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© 2011 日本輸血・細胞治療学会
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