日本輸血細胞治療学会誌
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症例
交換輸血を要した抗D抗体による新生児溶血性疾患の臨床経過と輸血された赤血球半減期の検討
丸橋 隆行須佐 梢西本 奈津美菅井 貴裕横濱 章彦定方 久延河野 美幸梶田 幸夫深石 孝夫野島 美久
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2012 年 58 巻 4 号 p. 533-538

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抄録

母親が抗D抗体を保有し胎児がRh0(D)陽性の場合,胎児や新生児が重篤な溶血性疾患を発症することがある.今回我々は,3度目の妊娠,出産であるRh0(D)陰性の妊婦が抗D抗体を保有し,出生したRh0(D)陽性の児が新生児溶血性疾患を発症,交換輸血を施行した症例を経験した.妊娠初期の不規則抗体検査にて酵素法のみ陽性の抗D抗体であったもののその後間接抗グロブリン法も陽性化,徐々に抗体価の上昇が認められ,出産時には2,048倍まで上昇した.出生直後から急激なビリルビン値の上昇とHb値の低下を認め,交換輸血,γ-グロブリン療法,光線療法の適応となった.交換輸血に用いた製剤は,O型Rh0(D)陰性赤血球濃厚液とAB型Rh0(D)陽性新鮮凍結血漿を院内にて混合調整した合成血である.患児はこれらの治療が奏功し軽快,退院した.Flow Cytometryによる解析から,交換輸血直後,患児赤血球はほぼO型Rh0(D)陰性赤血球に置換されていたが,日毎に患児由来のRh0(D)陽性赤血球の割合が増加,86日後では,ほとんどのO型Rh0(D)陰性赤血球は消失していた.輸血された赤血球の半減期は約36日であり,健常人赤血球とほぼ同等であった.

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© 2012 日本輸血・細胞治療学会
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