母親が抗D抗体を保有し胎児がRh
0(D)陽性の場合,胎児や新生児が重篤な溶血性疾患を発症することがある.今回我々は,3度目の妊娠,出産であるRh
0(D)陰性の妊婦が抗D抗体を保有し,出生したRh
0(D)陽性の児が新生児溶血性疾患を発症,交換輸血を施行した症例を経験した.妊娠初期の不規則抗体検査にて酵素法のみ陽性の抗D抗体であったもののその後間接抗グロブリン法も陽性化,徐々に抗体価の上昇が認められ,出産時には2,048倍まで上昇した.出生直後から急激なビリルビン値の上昇とHb値の低下を認め,交換輸血,γ-グロブリン療法,光線療法の適応となった.交換輸血に用いた製剤は,O型Rh
0(D)陰性赤血球濃厚液とAB型Rh
0(D)陽性新鮮凍結血漿を院内にて混合調整した合成血である.患児はこれらの治療が奏功し軽快,退院した.Flow Cytometryによる解析から,交換輸血直後,患児赤血球はほぼO型Rh
0(D)陰性赤血球に置換されていたが,日毎に患児由来のRh
0(D)陽性赤血球の割合が増加,86日後では,ほとんどのO型Rh
0(D)陰性赤血球は消失していた.輸血された赤血球の半減期は約36日であり,健常人赤血球とほぼ同等であった.
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