日本輸血細胞治療学会誌
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58 巻, 4 号
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総説
原著
  • 片岡 美香, 岡本 貴史, 山口 直子, 倉本 智津子, 西田 幸世, 星 順隆, 高橋 幸博
    2012 年 58 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    新生児への血小板輸血は,通常,輸血バックから直接行われず,注射用シリンジを用いている.注射用シリンジでの輸血が,血小板に与える影響をin vitroで検討し,有効かつ安全な輸血法を考える.
    アフェレシス濃厚血小板製剤を,室温で撹拌したもの(アフェレシスバッグ),分離バッグに分割し攪拌したもの(分離バッグ),注射用シリンジに分離し,空気層を入れ攪拌したもの(空気混入シリンジ),注射用シリンジに分離し,空気を除去し静置したもの(空気除去シリンジ)の性状変化,血小板機能を比較検討した.
    アフェレシスバッグと分離バッグ保存では,6時間後においても酸素濃度など性状の変化は認められなかった.空気除去シリンジの酸素濃度は,分離後2時間で有意に低下した.二酸化炭素濃度は4時間で有意に増加し,乳酸は増加,pH,血糖および血小板凝集能が低下した.空気混入シリンジの場合,撹拌することで保存による変化を防ぐことができた.
    新生児輸血方法として,分離バッグが効果的で安全な方法であった.それゆえ,少量バッグの作成が望まれる.今回は,in vitroのみでの結果であり,輸血後の生存率や回収率などの検討や,臨床的な判断が必要である.
  • 平山 順一, 藤原 満博, 秋野 光明, 本間 稚広, 加藤 俊明, 東 寛, 池田 久實
    2012 年 58 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    血小板製剤の機能をより良く維持するためには,振とうしながら保存することが重要であるとされている.しかし輸送中は振とうが中断される.また振とう器を保有しない医療機関の場合,患者の容態変化などにより輸血開始時間が大幅に遅れると,静置時間が長時間に及ぶ可能性も考えられる.本研究では洗浄血小板の振とうを72時間中断した場合の血小板機能への影響について検討した.
    M-solを用いて洗浄血小板を調製し,翌日(Day 1)まで振とう保存した.Day 1で2分割(コントロール群およびテスト群,それぞれ5単位相当)した後,Day 4までコントロール群は引き続き振とう保存し,テスト群は静置保存した.保存には600ml用ポリオレフィン製バッグを使用した.
    静置終了後(Day 4)での両群の性状を比較すると,MPV,%Disc,CD62P,凝集能,%HSRでは有意差がなかった.pHでは有意差が見られたがその差は大きくなかった.乳酸値はテスト群で有意に高値を示した.
    以上の結果から,M-solで調製した洗浄血小板を本検討で行われた条件で静置した場合,72時間までならば血小板機能に重大な影響を及ぼすことはないと考えられる.
症例
  • 丸橋 隆行, 須佐 梢, 西本 奈津美, 菅井 貴裕, 横濱 章彦, 定方 久延, 河野 美幸, 梶田 幸夫, 深石 孝夫, 野島 美久
    2012 年 58 巻 4 号 p. 533-538
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    母親が抗D抗体を保有し胎児がRh0(D)陽性の場合,胎児や新生児が重篤な溶血性疾患を発症することがある.今回我々は,3度目の妊娠,出産であるRh0(D)陰性の妊婦が抗D抗体を保有し,出生したRh0(D)陽性の児が新生児溶血性疾患を発症,交換輸血を施行した症例を経験した.妊娠初期の不規則抗体検査にて酵素法のみ陽性の抗D抗体であったもののその後間接抗グロブリン法も陽性化,徐々に抗体価の上昇が認められ,出産時には2,048倍まで上昇した.出生直後から急激なビリルビン値の上昇とHb値の低下を認め,交換輸血,γ-グロブリン療法,光線療法の適応となった.交換輸血に用いた製剤は,O型Rh0(D)陰性赤血球濃厚液とAB型Rh0(D)陽性新鮮凍結血漿を院内にて混合調整した合成血である.患児はこれらの治療が奏功し軽快,退院した.Flow Cytometryによる解析から,交換輸血直後,患児赤血球はほぼO型Rh0(D)陰性赤血球に置換されていたが,日毎に患児由来のRh0(D)陽性赤血球の割合が増加,86日後では,ほとんどのO型Rh0(D)陰性赤血球は消失していた.輸血された赤血球の半減期は約36日であり,健常人赤血球とほぼ同等であった.
  • 天本 貴広, 江頭 弘一, 川野 洋之, 東谷 孝徳, 石丸 健, 佐藤 進一郎, 奥 英二郎, 今村 理恵, 中島 収, 岡村 孝, 佐川 ...
    2012 年 58 巻 4 号 p. 539-546
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は赤血球に対する自己抗体の産生を特徴とする.AIHAは,抗体が赤血球と最もよく反応する至適温度により分類され,その分類には,温式AIHA,冷式AIHA,発作性寒冷血色素尿症,混合型AIHA,そして薬剤依存性AIHAなども含まれる.
    今回,我々は混合型AIHAによる急速で重篤な溶血をともなうEvans症候群を経験し,赤血球に対する自己抗体解析を行ったので報告する.
    患者は,70歳女性,2009年10月11日,全身衰弱と四肢の痺れにより当院に搬送された.入院時の身体所見で黄疸と貧血が認められたが,肝臓と脾臓の腫大はなかった.Hb 4.7g/dl,Ht 13.7%,網状赤血球47.6‰,血小板数11,000/μlで,生化学検査では,総ビリルビン3.24mg/dl,LD 802U/l,Hb尿も認められた.直接抗グロブリン試験は陽性で広範囲(4+),抗C3bC3d(4+),抗IgG(4+)であった.抗体検査で,冷式抗体が認められたが,抗I特異性や抗iの特異性は認められず,抗体価は生理食塩液法で128倍,4℃条件下のアルブミン法で512倍であった.3日後,患者は重篤な溶血性貧血による多臓器不全により死亡した.
報告
  • 早川 郁代, 徳野 治, 橋本 誠, 中屋 雄介, 籔本 義人, 高岡 裕, 前田 英一, 河野 誠司, 西郷 勝康, 杉山 大典, 杉本 ...
    2012 年 58 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    輸血後感染症検査の施行については適切な検査時期と検査項目を踏まえて実施することが重要である.本院では検査実施率を向上させるため,診療科へ検査実施時期を通知する具体的手段として,輸血同意書取得時の患者へのアナウンス,輸血患者リストの活用,電子カルテ画面を用いての輸血後感染症検査を通知する方法(輸血後感染症検査通知システム)を順次実施した.
    これらの方法の有効性を検証するため,本院において2008年1月から2011年9月迄に同種血輸血を受けた患者6,647人を対象に,輸血後感染症検査実施状況について,患者カルテの検査情報を後向きに調査した.1期:輸血患者リスト送付前,2期:輸血患者リスト送付後,3期:輸血後感染症検査通知システム導入後の各期間における肝炎検査(HBV,HCV)実施率の平均は21.6%,22.2%,39.7%,肝炎+HIV検査実施率の平均は7.0%,8.2%,31.2%であり,1期・2期と比較して3期で有意に向上した.
    輸血後感染症検査実施率の向上において,輸血後感染症検査通知システムの継続した有効性が認められた.
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