抄録
献血者に見出されたHIV-1の感染動態を明らかにするために,過去及び現在のHIV-1陽性検体についてサブタイプ,薬剤耐性変異の有無を比較検討した.全国で献血された1992年から2001年9月までのHIV-1陽性検体237例(過去検体)と,2009年9月から2012年5月までの212例(現在の検体)について解析した結果,過去検体のサブタイプはBが86.5%,CRF01_AEが10.1%,CRF02_AGが0.8%,その他が2例0.8%であった.現在の検体ではサブタイプBが90.6%,CRF01_AEが5.2%,CRF02_AGが2.4%であった.薬剤耐性変異は,過去検体で8.6%,現在の検体は21.4%であった.また,薬剤耐性変異群におけるリバータントT215Xの割合は過去検体で12.5%,現在の検体で12.9%であった.これらから国内のHIV-1サブタイプのリコンビナントは,献血者全体で見ると増加は認められなかった.また,薬剤耐性変異は過去に比べ現在は増加しており,HIV治療者を含まない未発症感染者にも耐性変異株が広まっていると考えられた.