日本輸血細胞治療学会誌
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報告
輸血後劇症肝炎の経験から得られた感染症検査の改善点と課題
山田 千亜希藤原 晴美渡邊 弘子古牧 宏啓牧 明日加芝田 大樹永井 聖也石塚 恵子金子 誠朝比奈 彩竹下 明裕
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2013 年 59 巻 1 号 p. 67-72

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抄録
当院にて経験した輸血後劇症肝炎症例を検証し,感染症検査の重要性と課題を改善した.患者は赤血球濃厚液(RCC-LR)を周術期に輸血した.輸血前の感染症検査は全て陰性であったが,輸血95日後より全身状態が急速に悪化し,トランスアミナーゼの急上昇とHBV抗原の陽転化を認め,劇症肝炎と診断された.患者は血漿交換を含む治療を受けたが,不幸な転帰をとった.献血者と患者のHBV genotypeは一致し,患者は生物由来製品感染等被害救済制度による救済給付の対象となった.
本症例を受けて輸血後感染症検査の重要性が再認識され,実施率の向上に努めた.多忙な臨床医に対し,感染症検査の実施時期と検査項目を該当症例ごとに提示した.また患者に対する感染症検査の説明文書を作成し,患者本人に対して輸血部門スタッフが検査の説明を行い,自主的な検査を呼びかけた.他院で検査を行う事例には当該施設に検査結果の送付を依頼し,結果の一括管理を行った.その結果,輸血後感染症検査の実施率は約70%に改善した.輸血部門が積極的に介入し,臨床側と患者双方に輸血後感染症検査の重要性を理解してもらい,検査の遂行率を上げていく必要がある.
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© 2013 日本輸血・細胞治療学会
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