日本輸血細胞治療学会誌
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原著
HLA抗体検査における血清非働化の必要性について―血清の非働化によりHLA抗体強陽性を判定しえた2症例の経験から―
万木 紀美子小島 裕人平位 秀世菱田 理恵藤井 直樹大久保 和俊三浦 康生兼松 明弘近藤 忠一吉岡 聡小川 修高折 晃史佐治 博夫前川 平
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2013 年 59 巻 3 号 p. 462-469

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抄録

HLA抗体は臓器移植の予後と関連性があり,その測定には高い信頼性が求められる.われわれは,ドナー特異HLA抗体(Donor Specific Antibody:DSA)弱陽性の状態で腎臓移植を計画中,血漿交換(PE)後にDSAが大きく上昇したにも関わらずLABScreen single-antigen beads class I(LS-Single I)法で正しく判定しえなかった症例と,同法により高力価のHLA抗体を過少評価していた臍帯血移植の症例を経験した.これらの原因を探るため,測定系の中に含まれる抗原抗体反応が,被検血清により阻害され得るかどうかを検討した.その結果,特にHLA抗体が高力価である場合に,被検血清が二次抗体の反応を阻害する現象が認められた.この血清による反応阻害作用はEDTA添加・加熱処理・DTT処理などの血清の非働化によって減弱することから,補体が関与するプロゾーン様現象であることが示唆された.血清中の補体が二次抗体の反応を阻害するためにHLA抗体が低力価と判定される場合があるため,LS-Single I法によるHLA抗体の検査における血清の非働化が必要と考えられた.

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© 2013 日本輸血・細胞治療学会
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