抄録
ABO血液型不適合生体肝移植では,通常の臓器移植に見られる細胞性免疫拒絶に加えて液性免疫拒絶が問題となる.本研究では,当院でABO血液型不適合成人生体肝移植を施行した17例を対象に,リツキシマブ投与群(9例),非投与群(8例)における抗A,抗B抗体価の推移とFFPの使用状況を比較検討した.投与群においてはさらに,リツキシマブを移植1週間前に投与した投与群-I(3例)と原則移植2週間前に投与した投与群-II(6例)に分けサブ解析を行った.移植に伴い抗体価が移植前よりリバウンドを示した症例は非投与例で8例中5例認めたが,投与群ではそのような症例は認めなかった.移植後1カ月間で抗体価が再上昇したため血漿交換(Plasma exchange:PE)を施行した症例は非投与群で8例中4例,投与群-Iで3例中2例存在し,FFPの平均使用単位数は,非投与群 122単位,投与群-I 187単位であったが,投与群-IIではPE施行例はなく,FFPの使用はゼロであった.以上の結果より,移植2週間前にリツキシマブを投与することで,より効果的に抗A,抗B抗体価のリバウンドを抑制すること,移植後のPE回数を減少させFFPの使用量の減少に寄与することが示唆された.